宏之さんの短歌に曲をつけ、両親にプレゼントした桃谷法信さん=有田町の法泉寺

イベントで笹井宏之さんの短歌の曲に乗せて、オカリナ演奏を披露する父の筒井孝司さん(中央)=昨年11月4日、有田町の唐船城址駐車場

 有田町の「夭逝(ようせい)の歌人」笹井宏之さん(本名筒井宏之)=享年26=の短歌が、没後10年を経た今もなお多くの人の共感を呼んでいる。法泉寺住職の桃谷法信さん(70)=同町=が短歌に曲をつけ、宏之さんの両親にプレゼント。父筒井孝司さん(67)が、学校でのコンサートやイベントでオカリナ演奏と歌声を披露し、宏之さんの作品を新たな形で人々に届けている。

 宏之さんは難病のため、高校生の頃には起き上がることが難しくなり、幼少期から親しんできたピアノやフルートなどの演奏が徐々に困難になった。思いの丈を代わりに表現する手段として短歌をたしなむようになり、佐賀新聞読者文芸欄の投稿など作品が評判となった。作品は出版され、最近では宏之さんの名を冠した短歌賞も創設された。

 孝司さんの知人で歌のサークルや子ども雅楽で指導する桃谷さん。今回作曲するきっかけとなったのは、佐賀新聞の富吉賢太郎専務取締役・論説委員長が昨年7月に宏之さんについて書いた有明抄だった。「療養生活の中でひたむきに詠んだ感性と表現力に感動させられた」といい、翌8月には宏之さんの仏前で、両親の孝司さんと和子さん(67)に弾き語りし、曲を贈った。

 曲をつけたのは、佐賀新聞への投稿と宏之さんの代表作計5作品で、「葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある」「冬ばってん『浜辺の唄』ば吹くけんね ばあちゃんいつもうたひよつたろ」「ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす」など。

 碗琴やオカリナの奏者で、地元の男声合唱団のメンバーでもある孝司さんは、ステージで歌うことを約束。昨年11月の地元のイベントで、合唱団「とうせん・ズ」の仲間とともに初披露した。その後も、学校や施設でのコンサートで、前奏や間奏にオカリナ演奏を交え歌っている。孝司さんは「こうして宏之のことを思ってくれていることがありがたい。この曲を歌い続けていきたい」と贈り物への感謝を話している。

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