筒井宏之さん

笹井宏之さんの初の文庫版を手にする父筒井孝司さん(右)と母和子さん=有田町の自宅

第1回笹井宏之賞の受賞作を掲載する短歌ムック「ねむらない樹」vol.2

 「夭逝(ようせい)の歌人」笹井宏之さん(有田町、本名筒井宏之、享年26)が、再び脚光を浴びている。11日に未発表作を含む初の文庫版「えーえんとくちから」(筑摩書房刊、208ページ、税込み734円)が刊行された。入手困難になっていた作品集の文庫化で、24日で没後10年を迎えるのを前に話題を集めている。

 2011年にパルコ出版が発売し、重版未定になっていた同名の作品集を再録した。未発表のエッセー1編、詩5編、俳句30句も新たに収録。宏之さんが佐賀新聞読者文芸欄に投稿した文語体の作品やインターネット上で発表した言葉遊び風の作品など、多彩な作風に触れることができる。

 解説では宏之さんが憧れていた歌人穂村弘さんが、宏之さんの作品を「未来の希望に繋がる鍵の形をしている」と評している。小説家の小川洋子さんや江國香織さんの本も担当する、名久井直子さんが装丁を手掛けた。

 今月発売の雑誌「暮しの手帖」98号で歌人の東直子さんが宏之さんの歌を引用するなど、今でも宏之さんの透明な詩情は人々の胸から去ることがない。全国の書店員にもファンが多く、新刊の発売に書店の動きも良いという。

 宏之さんの父孝司さん(67)は「最初の一年は特につらく、時間が止まっていたよう」と振り返り「今は少しずつ遺作の整理を進めている。未発表の作品も徐々に世に出して、多くの人に楽しんでほしい」と話す。

 

第1回短歌新人・笹井宏之賞 全国から384作応募

 歌人笹井宏之さんの名を冠した短歌新人賞「笹井宏之賞」の第1回受賞作が決まった。15歳から77歳までの応募者から有効応募総数384作が集まり、大賞には柴田葵さん(36)=東京都=の「母の愛、僕のラブ」が輝いた。強固に構造化した存在感あふれる作品世界が評価された。

 同賞は「八月のフルート奏者」など宏之さんの歌集を出版する福岡市の出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」が、若手歌人を発掘しようと創設。未発表短歌50首を一編として募り、歌人の大森静佳さんら選考委員が審査した。

 大賞を含めた受賞作の全作品は2月1日に発売する短歌ムック「ねむらない樹」の2号で発表し、選考委員座談会の模様も伝える。同社の田島安江社長は「名前を冠した賞の創設で、(笹井さんを)より長く読み継がれる作家にしたい」と賞に込めた願いを語る。

 受賞者は以下の通り。

 大森静佳賞=谷口由里子「シー・ユー・レイター・また明日」▽染野太朗賞=浪江まき子「刻々」▽永井祐賞=阿波野巧也「凸凹」▽野口あや子賞=八重樫拓也「墓を蹴る」▽文月悠光賞=井村拓哉「揺れないピアス」(敬称略)

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