正直、とてもうらやましいと思った。デザイナー吉岡徳仁さんのことである。限りなく澄んだ光の空間。その世界をまっすぐに表現する力。無機質に見えて、どこか心が安らぐのは根っこに日本文化「和」への思いがあるからだろう◆県立美術館で開かれている特別展「ガラスの茶室―光庵(こうあん)」(2月11日まで)。会場は三つの展示室で構成されている。最初の部屋でいきなり巨大なガラスのテーブルが現れる。物言わぬ氷のような塊でありながら、何かを語りかけてくるようだ。自然にできた表面の波模様が美しい◆二つめの部屋が「ガラスの茶室」。取り囲むようにパリのオルセー美術館にも常設されている吉岡さんのガラスのベンチがある。「座っていいのかな」と思いながら静かに腰を下ろす。すると、光と人影が微妙に結び合う空間が日ごろの喧噪(けんそう)を忘れさせ、瞑想(めいそう)にも似た時間が流れる◆吉岡さんはトヨタ自動車のブースを手がけたほか、ニューヨーク近代美術館への作品の永久所蔵など世界に影響を与え続けている。三つめの部屋では、そのアートへの思いがスクリーンで詳しく紹介されている◆有田工業高デザイン科卒。同科の誇りである。14、19、20日、2月10日には、茶室でお点前が披露される。「茶室が浮いているような感覚」といわれる不思議な世界をぜひ体感してほしい。(丸)

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