特別な機器でカラスの鳴き声を録音する服部南さん(手前)。佐賀県庁南側の電線には約700羽が集まるときもあるという=佐賀市

カラスの生態を研究している服部南さん=佐賀市の佐賀大学本庄キャンパス

 佐賀県庁周辺に飛来するカラスが増え、関係機関が対応に苦慮している。ふん害が著しいため、わなを増設したり、臭いで遠ざける忌避剤を木に設置したりしているが、抜本的な解決には至っていない。そうした中、カラスの生態を研究する佐賀大学農学部の学生らが、鳴き声に反応する習性を利用した群れの分散化を模索している。分散先の住民の理解などの課題があるものの、人とカラスの共存の可能性を探っている。

 佐賀市と佐賀県によると、県庁周辺のカラスの飛来数は2011年1月に8295羽だったが、18年2月には1万1090羽に上った。渡り鳥の「ミヤマガラス」が半数近くを占める。天敵が少なく、営巣に適した木々が多いことが県庁周辺に集中する理由とみられる。数の多さが異様な雰囲気を醸し出し、排せつ物による道路や公園の汚れも著しいため、市や県は大型のわなを増設し、忌避剤を施す対策もとってきたが、県生産者支援課は「解決につながっていない」と話す。

 鳴き声を利用した群れの分散化を探っているのは、佐賀大学農学部4年の服部南さん(21)。カラスの生態を研究しており、群れが鳴き声を聞き分けて移動先やねぐらを変えるという習性に注目した。

 カラスの声には天敵が現れた時に放つ「警戒コール」と、寝る時など安全な状態で出す「安全コール」がある。山形市は宇都宮大学発のベンチャー企業「Crow Lab(クロウ・ラボ)」の協力で、市中心部から警戒コール、約100メートル離れた施設から安全コールをスピーカーで流し、反応を調べた。すると3回の実験全てで市中心部のカラスが安全コールの方へ移動し、通常は200羽いるカラスが翌日はいなかった。

 スピーカーの音量は広報車の拡声器のように、家の中でも聞こえるほどの大きさだが、山形市は町内会や周辺施設にチラシを配り、事前に実験を周知した。住宅地が比較的少なかったこともあり苦情はなかった。

 服部さんは佐賀でカラスの鳴き声を録音し、同じような実験を試みている。県は「音声以外の解決策は思いつかない」として、誘導先の確保や実験の周知などに協力する姿勢を見せる。

 ただ、群れの分散化にも課題がある。近隣住民にどう理解してもらうかや、誘導先でのカラスの定着、実験規模など不確定な要素が多く残っている。服部さんは「カラスを殺さず、人と共存できる道があるはず」と来春以降も佐賀大の大学院に進んで研究を続ける考えだ。

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