いまや田畑を荒らし厄介者扱いされるイノシシ。今年は「亥(い)」の年なので、その名誉のためにいろいろ調べてみた。もともと「山の神」やその使者と考えられており、明治の紙幣「改造十円券」や「甲十円券」にも採用されている◆紙幣の図案は、平安京遷都に尽力した和気清麻呂(わけのきよまろ)の伝説をもとにした。時の天皇に代わって皇位継承を企てた弓削道鏡(ゆげのどうきょう)が清麻呂に阻止されたため、暗殺しようとした。その時、なんと300頭のイノシシが現れ清麻呂を守ったという(日本銀行「お金の話あれこれ」)◆古代中国では亥が「水」を示すことから、防火の願いを込めた風習が残る。県内にも「亥の日は囲炉裏(いろり)のたき始め」といった言葉がある(佛坂勝男著『佐賀歳時十二月』)。10月最初の亥の日を「亥の子節句」といい「亥の子の石つき」をしたり、餅をついたりする◆ことわざはないかと探していたら「遼東(りょうとう)の豕(いのこ)」という言葉を見つけた。「豕」はイノシシや豚のこと。昔、白い頭の豚が生まれたので特別なものだと思い、お上に献上しようとしたところ、出合った豚の群れの頭がみんな白かったので無知を恥じたという。自分だけが知っていると思い込んで得意がることの例えである◆「猪突(ちょとつ)猛進」「猪(いのしし)武者」。向こう見ずへの戒めを込めた言葉も。結構、大事なところで登場するイノシシだ。(丸)

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