山腹が高さ135メートル、幅70メートルにわたって崩壊して半年がたつ現場。道路は現在も通行止めだが、年末年始の9日間は仮通行できた=伊万里市東山代町滝川内

被災からの半年間を振り返る久保田義和さん(右)と朝子さん。「今年は何事もないことを祈っています」=伊万里市東山代町滝川内の自宅

 土砂崩れでむき出しになった山肌は、半年間形を変えていない。伊万里市東山代町滝川内地区に、昨年7月の西日本豪雨により生活道路が寸断されたままの集落がある。住民の男性は「地域の人に助けられ、どうにか暮らしていけている」と感謝する一方で、寄る年波と多発する自然災害に不安を募らせる。 

 「何事もなく、健康でありますように」。同地区に住む久保田義和さん(65)と妻の朝子(ともこ)さん(59)は年が明けた1日夜、地元の神社に初詣をした。ここ半年は夜間に外出することはなかったが、「せっかく道が使えるので」と車で出掛けた。

 同地区は国見山系の山あいにあり、西日本豪雨では2カ所で生活道路が寸断された。小中学校そばの県道は2カ月半後に仮設道路が設置されたが、地区の外れにある集落に通じる市道は通行止めのまま。集落には久保田さん夫妻と単身の高齢者の2世帯が暮らしており、年末年始の9日間だけ規制が解除された。

 集落から数百メートル先にある土砂崩れの現場は、市道脇の山腹が高さ135メートル、幅70メートルにわたって崩壊している。土砂災害警戒区域になっていた。市によると、道路周辺の土砂や倒木の撤去は済んだものの、二次災害の恐れがあるため通行再開の見通しは立っていない。

 久保田さんらは現在、コンクリート舗装されていない旧道を使っている。長く人の手が入らず2キロにわたって石がゴロゴロしていて、朝子さんが乗用車で通った初日にタイヤがパンクした。「行政にお願いしようと思ったけど、自分たちしか使わんから遠慮した」。夫婦は夏の暑い日に半日かけて石を取り除き、草を払った。

 ところが旧道の方も土砂崩れの危険性が高まり、9月下旬から3カ月近く通行止めになった。もう一つの迂回(うかい)路の林道はさらに悪路だったが、泥道に砂利をまいてならす作業を地区の人たちが手伝ってくれた。

 義和さんが子どもの頃、集落には10世帯50人以上が住んでいた。しかし、若い世代が流出し、残された高齢者も不便を感じて市中心部へ出て行った。幼なじみからは「あんたも早う(山を)下りてきんしゃい」と言われる。

 大工をしている義和さんも、いつかは別の土地に家を建てようと思っている。ただ、生まれ育った土地を離れ難く、まだ先のことと考えていたが、今回の被災で気持ちは揺らぐ。

 「今は多少不便でも暮らしていけるけど、体が動かんごとなってまた災害が起きたりしたら、子どもや地域の人にもっと心配かけるけんね」。災害の多発は、周辺部の過疎化を加速させる懸念をはらむ。

このエントリーをはてなブックマークに追加