朝鮮半島を巡る動きが、これまでにない試練を日本にもたらそうとしている。北朝鮮と韓国が平和共存に向け接近しながらも、日本との関係では摩擦が拡大、南北対日本の構図が浮き彫りになりつつある。日本は不信と対立の悪循環という構造が終わりつつある朝鮮半島の秩序再編に備える覚悟が求められる。

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は年頭演説「新年の辞」で、韓国と共闘するような対米姿勢を打ち出した。昨年行った3回の南北首脳会談での合意を踏まえ、民族の同一性を訴えながら韓国の共感を獲得して米韓同盟を弱体化させ、非核化交渉で有利な足場を築こうとの戦術だろう。

 「新年の辞」では例年、対日関係には言及しておらず、今年も同様だった。だが、北朝鮮は日本人拉致問題は「解決済み」との主張を繰り返し、植民地支配の賠償に乗り出すよう要求する姿勢を変えていない。

 一方で韓国は、海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題で日本に謝罪を要求するなど全面的に対決する構えだ。年末に日本側が公開した海上自衛隊哨戒機からの映像に対抗し、レーダーを照射したとされる韓国海軍駆逐艦からの動画を公開、一歩も譲らぬ姿勢を鮮明にした。

 韓国最高裁で原告勝訴の判決が確定した元徴用工訴訟では、弁護団が日本企業の資産差し押さえを申請した。韓国政府関係者によると、外務省など関係省庁が次官級による会議で判決への対応策は検討しているという。だが、判決から2カ月が経過しても事態収拾への方向性すら示されていない。

 年をまたいで起きた南北それぞれの動きは、南北が主導しようとする朝鮮半島での秩序再編が動き始めていることを示す。ここで日本は第三者の立場で傍観するわけにはいかない。長期的視点で構造転換のうねりへ能動的に対処することが重要だ。

 まず、北朝鮮の非核化では、米朝交渉の行方を注視しながら後戻りできない非核化を技術的、資金的に支える役割を果たすべきだ。金委員長の「新年の辞」は、非核化方針について初めて国内向けにも、その立場を公式化した。

 しかし、核開発の実態に関するリスト申告や査察受け入れなど、具体的措置は明らかにされず、依然として「決意表明」のレベルにとどまった。

 6カ国協議の共同声明など、非核化に関する過去の合意は申告と査察の壁を越えられずに頓挫してきた。「決意表明」を具体化させるシナリオを日米が主導して綿密に練り上げるべきだろう。

 本来、日米韓の協調を土台に、北朝鮮を非核化へ誘導する構図が望ましいとされてきた。だが、日韓だけでなく米韓関係も北朝鮮に対する制裁継続を巡りぎくしゃくしている。非核化には制裁の緩和・解除も必要とする韓国の北朝鮮への融和姿勢と日米との温度差は拡大するばかりで、日米韓の枠組みは空洞化している。

 日韓や米韓が関係修復を図る努力は必要だが、目標は修復ではない。北朝鮮の非核化なのだ。経済交流をはじめとする南北の協力関係は、非核化プロセスが本格化してこそ軌道に乗る。日韓外相は電話会談でレーダー照射問題の早期解決で一致した。日韓関係の復元力が試される。(共同通信・磐村和哉)

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