安倍晋三首相は年頭記者会見で、5月1日の新天皇即位に伴って定める新元号を「4月1日に発表する」と表明した。官民の情報システム改修に1カ月の準備期間を確保し、国民生活の混乱を避ける狙い。皇位継承前の新元号公表は憲政史上初めて。

 自民党保守派は「新天皇即位後の改元」を主張し、事前公表に否定的だった。政府はシステム改修期間の確保を優先し、保守派の主張を退けた形だ。だが、国民本位に徹するなら、より早い公表も可能だろう。

 新元号の選定は元号法と既定の選定手続きに沿って政府が極秘のうちに進めている。しかし、元号は国民が共有する「時代の名前」であり、選定の方法や公表の時期について、国民全体の幅広い議論が必要ではないか。

 1979年に制定施行された元号法は「元号は政令で定める」「元号は皇位の継承があった場合に限り改める」(一世一元)と規定。具体的な選定方法は閣議報告された元号選定手続きで定められた。

 選定手続きは元号について「国民の理想にふさわしい良い意味を持つ」「漢字2字」「読み書きしやすい」「俗用されていない」―などとし、有識者に候補選びを依頼して全閣僚会議などを経て決めると定めた。

 「平成」は元号法と選定手続きに基づいて決められ、昭和天皇が逝去した89年1月7日に発表された。出典は中国の古典「書経」「史記」。天地の安定、国や家の内外の平和を求めた言葉だ。

 日本の元号は古代中国から伝わった習慣で、645年に初めて「大化」が使われ、「平成」で247番目。

 戦後、国民主権の憲法精神に反するなどとして元号不要論も主張されたが、元号法制定で元号は法的根拠を得た。今は昔に比べ西暦を使う人が増えたが、元号併用も日常となり、廃止を主張する声は少ない。

 ただ、政府が密室で決定し、お触れを出すような現在の選定方法には違和感がある。天皇は改元政令を公布するが、元号の選定に関与しない。もっと民主的で公開された選定ができないか。候補の公募や国民の投票による絞り込みも考えられる。

 過去の典拠は中国の古典ばかりだが、元号に詳しい東大史料編纂所(へんさんじょ)の山本博文教授は「そろそろ日本の古典採用を検討しても良いのではないか」と話す。傾聴に値する意見だ。

 事前発表の時期についても、より早い方が情報システム改修などに入念な準備ができ、トラブルも減るだろう。将来的に十分に前倒しできれば、即位の年のカレンダーや手帳に新元号を印刷できる可能性も出てくる。

 天皇陛下は2016年8月、ビデオメッセージで高齢による体力低下のため退位を望む意向を表明。有識者会議の検討を経て、法が整備されて退位が決まった。高齢化により、将来も存命中の退位、改元はあり得る。

 秋篠宮さまは昨年11月の記者会見で、天皇代替わりに伴う重要儀式「大嘗祭(だいじょうさい)」について「宗教色の強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と政府に異議を唱えた。

 象徴天皇の在り方も時代の流れの中で、変化していくのは、当然のことだ。元号選定や公表時期についても「神聖不可侵」とタブー視せず、国民本位で改革を進めていくべきではないか。(共同通信・森保裕)

このエントリーをはてなブックマークに追加