「佐賀の濃密な人間関係こそ強み」と語るスパルタデザイン社長の唐松奈津子さん=東京都内

 子育てをしながら仕事を続けたい-。広告デザインや育児グッズの通販サイト運営を通し、女性の多様な働き方を支援するスパルタデザイン代表取締役、唐松奈津子さん(39)。地方の閉塞(へいそく)感が嫌で佐賀を飛び出し、東京の第一線で走り続けてきた。リレーインタビュー最終回は、佐賀の可能性を再発見したという唐松さんに佐賀県の将来像を聞いた。

 -大学進学を機に故郷の佐賀市を飛び出した。町を歩けば知人に会う。常に誰かに見られている感覚。濃密な人間関係。そんな佐賀の「狭さ」が嫌だった。クリエイター志向が強く、大学卒業後、リクルートに就職。広告デザイン会社への転職を経て、同僚だった女性と一緒にスパルタデザインを立ち上げた。

 会社の登記を終えた数日後、相方の女性から妊娠を打ち明けられた。自分の体を調べると、私も妊娠していた。妊婦2人での会社設立。出産ぎりぎりまで働き、産後1カ月で復帰したが、育児をなめていたと痛感した。子どもは自分の意思ではコントロールできない。周囲の人たちに支えてもらいながら一緒に育てていくしかなかった。母親はできる限り子どものそばにいたい。理想としては子どもを横に置いて在宅ワークができればいい。そんな思いからママが在宅で働き、企画に参加する育児グッズ通販サイトを立ち上げた。

 -デザインを武器に働く女性を支援してきた唐松さん。子育てを経験し、佐賀への思いに変化が表れた。

 何もかもそろう都会の生活は子どもの可能性を狭めている気がして。自分が子どものころは工夫して足りないものを生み出そうとしていた。『もう佐賀には戻らない』と啖呵(たんか)を切って出てきたが、佐賀の資源に気付いていなかった。

 -東洋大学大学院で官民連携事業の専攻に所属し、調査パートナーも務める。その分野で、佐賀の存在感は大きいという。

 佐賀出身というと一目置かれる(笑)。先駆的なICT教育や建築家西村浩さんらによるまちづくり。CSO(市民社会組織)との連携。今や佐賀を特別に意識しなくても学識者やクリエイターとの会話や電車の中など東京の至る所で佐賀の情報に触れる。

 -2月から佐賀に子どもを転校させ、生活しながら調査を進め、まちづくりや女性支援に携わる計画だ。

 地域に真剣な人が増えれば、広報量が増え地域の価値も高まる。企業のブランド構築を請け負ってきた。佐賀を手掛けるなら「子育て世代にやさしいまち」という切り口から攻めたい。東京の佐賀出身者は仕事さえ何とかなれば佐賀で子育てしたい人が多いはずだし、首都圏の感覚で言えば福岡だって通勤圏だ。

 -故郷への視点を含め、唐松さん自身、大きく変わった。平成の先の展望は。

 佐賀の濃密な人間関係が苦手だったが、それは何かやろうとすればすぐに人が集まる強みだと分かった。これからいろいろな垣根がなくなる。例えば、公共と民間の垣根はなくなりつつある。収支がうまく回るものは民間がやるという発想だ。自治体はフォローする役割。そんな中で私も佐賀が良くなるお役に立ちたい。県民が佐賀の良さに気付き、誇りを持つ。そうやって幸せと満足感を増していくことが佐賀の未来を明るくするはずだ。


からまつ・なつこ 佐賀市出身。2002年、リクルート入社。広告デザイン会社に転職後、06年にデザイナーとして独立し、08年にスパルタデザイン(東京都)を設立すると同時に妊娠が分かった。09年に育児グッズ通販サイト「マンマーニ」を開設し、編集長を務める。

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