〈あらたまの年の若水くむ今朝はそゞろにものの嬉しかりけり〉。樋口一葉の新春詠である。元日のすがすがしい朝に初めてくむ水「若水(わかみず)」。その神聖な水で心身を清め、一年の平穏を祈る。一葉は貧しさにあえいでいたが、新年を迎える心は清新であった◆時代は巡っても日本にはお正月を迎える多くの風習やしきたりがある。「京ことば」にある「こうと」は質素な中にある品格を表す。商家では新年は「先祖への礼拝から」をしきたりとし、お正月でも贅沢(ぜいたく)を慎むべしと教えられた◆家族の祝いは仏間から台所に移り、大福茶、屠蘇(とそ)、雑煮、三種の祝い肴(ざかな)をいただく。大福茶は昆布と小梅の入ったお茶。三種の肴はごまめ、数の子、たたきゴボウ。ゴボウは地中にまっすぐ根を張ることから縁起物とされる。夕飯は三が日ともお茶漬けと香の物だけであった◆『京町家のしきたり』(杉本節子著)から紹介した。杉本さんは「質素倹約を信条とした『こうと』。今の時代、ちょっと誇れるような気がします」と書いている◆2019年が明けた。平成最後の年である。時を経て今も息づく日本のお正月。今年はどんな一年になろうか。良いことがあればいいが。いや贅沢は言うまい。つつましく暮らせば何とか生きていける。「こうと」の質素な信条に幸せとは何かを見い出す年にしたい。(丸)

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