「ラインケア」とは、企業などの職場のメンタルヘルス対策において、部長・課長などの管理監督者が直属の部下にあたる労働者へ、個別の指導・相談や職場環境改善を行う取り組みのことを意味します。組織内で指示命令を出す相手=部下を持つ管理監督者は、部下の状況を日常的に把握し、具体的なストレス要因の評価やその改善を図ることが可能な立場にあるため、職場環境の把握と改善、働く人からの相談への対応といった行動が求められます。ラインケアは、企業などにおけるメンタルヘルスケアの要であり、事業者は管理監督者がこれを適切に実行できるよう、教育・研修、情報提供を行う必要があります。

 ところで、最近、高校の同級生(A氏)から突然の電話がありました。「何かできる仕事を探している」。A氏は、大学卒業後、東京の一流商社に就職し、役員まで昇格しました。オーストラリア在住の時(30歳前半)、一度電話があり、大豆の相場で失敗し、ひどく落胆しましたが、上司から救われたようでした。その後、50歳前半に関連会社の取締役社長となり、活躍していましたが、今回職場の同僚が多額の損益を被る取引に失敗。A氏は責任をとり、退職したとの内容でした。私は約30年ぶりの電話にびっくりして、どう答えたらよいのか、当惑しましたが、久しぶりに会おうと約束しました。

 ラインケアの話に戻ると、上司が部下の失敗に対して、どこまで責任をとるべきか、議論の的になりますが、日頃から部下を信頼し、感謝の気持ちを忘れていなかったからこそ、辞職を決断できたのでしょう。結局、ラインケアとはお互い信頼感を持ち続けることができるかどうかにかかるのだ、と痛感しました。(佐賀大学院教授・保健管理センター・産業医 佐藤 武)

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