佐賀県知事選で現職の山口陣営が最後に開いた白石町での総決起大会。会場は空席も目立った=14日夜、杵島郡白石町総合センター

 外は冷たい雨が降っていた。知事選の投票が締め切られた16日午後8時、テレビが一斉に「当選確実」を速報すると、現職の山口祥義氏(53)は、自民党や各団体の有力者が待つ事務所に現れた。新人4人の激戦を勝ち抜いた前回のような高揚感はない。祝福を受ける山口氏の表情は硬かった。

 35・26%―。陣営が最も気にしていた投票率は前回を19・35ポイント下回り、県政史上最低を更新した。山口氏への信任を票の形にしたのは有権者の3分の1にも満たない。「正直言って落ち込んでいる」。一夜明けた佐賀新聞社のインタビューに落胆を隠さなかった。

 「最悪だ。大都市でもあるまいし、これではただ勝っただけ。あれだけ投票を呼び掛けたのに、この結果なら手の打ちようがない」。自民党のベテラン県議は低投票率に顔をしかめた。

 全20市町に後援会を整えた。農業、商工業、建設業といった全県的な団体の支持や、政権与党の推薦も取り付けた。「今回は勝敗というより、投票率。国策課題がある中で、圧倒的に勝たなければ国と渡り合えない」。陣営関係者は2期目を見据え、県政運営をスムーズにするためにも圧倒的な得票を期待していた。

 告示2週間前に出馬表明をした共産党系候補の今田真人氏(72)との選挙戦。山口陣営の決起大会は序盤から、空席が目立った。「関心が高まっていない」と感じた陣営幹部は中盤に選対会議を開く。そして動員の徹底とともに、期日前投票に足を運びやすい環境づくりを各組織へ通知した。

 その呼び掛けも結果的に上滑りする。終盤の佐賀市の大会では前回の3分の1、山口氏の両親の地元の杵島郡白石町では6分の1程度の集まりにとどまった。

 「盛り上がらないのは天下太平、県政が安定しているということ」。ある自民幹部は楽観的に選挙戦を分析してみせるが、山口氏を応援した各市町には、投票率が伸びなかったことで重苦しい雰囲気が漂う。

 街演は地元の首長や議員が先導して回ったが、有権者の集まりが悪い地域で山口氏は公然と不満を口にしていた。ある自治体の議員は「投票率で数字を出さないと何をされるか…」と不安がっていた。知事には予算編成や人事権に強力な権限があり、2期目の山口氏の対応を懸念していた。

 投票率が過去最低を更新する中で、増えたものがある。「無効票」で、前回より1千票以上増えて3827票に上った。選択に戸惑ったのか、現職への異議なのか。有権者の複雑な心情を映すように、中には2人の名前を混ぜ合わせた表記もあったという。

 佐賀県知事選は、史上最低の投票率で山口祥義氏が再選を果たした。選挙戦の内実や今後の県政運営の課題を見つめる。

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