今年は明治維新150年。新聞を通じて地域の歴史を学ぶ「さが維新塾」。本紙記者による今回の出前授業は小中一貫校大町ひじり学園(杵島郡大町町)中学部の7年生(中1)です。

【きょうの教材】天然痘との闘い 弘化2(1845)年以降

「さが維新前夜」2017年6月24日付

淳一郎(後の11代佐賀藩主鍋島直大)への種痘を描いた「直正公嗣子淳一郎君種痘之図」(佐賀県医療センター好生館蔵)

 佐賀県医療センター好生館が所蔵している「直正公嗣子淳一郎君種痘之図」は嘉永2(1849)年、後に11代藩主となる淳一郎(直大)に、天然痘予防のための種痘を施す場面を描いている。
 淳一郎への種痘は、牛が感染する牛痘に由来する痘苗(ワクチン)を接種し、免疫をつくる「牛痘法」が用いられた。それまで実施されていた「人痘法」は、天然痘患者から得た痘苗を接種する方法で、そのまま天然痘を発症してしまう恐れがあった。天然痘はウイルスを病原体とする伝染病で、感染力が非常に強い。「不治の病」と恐れられ、まん延するたびに多数の死者が出て、江戸時代は死因のトップだった。『鍋島直正公伝』も「天保末から流行した天然痘はしばらく伏していたが、弘化2(1845)年ごろから再び広がり、年を越すと死者が増えた」と、繰り返される惨状を伝えている。

伊東玄朴の旧宅(左奥)と、庭にある玄朴の胸像=神埼市神埼町的

 牛痘法は、英国の医師ジェンナーが18世紀末に考案。佐賀藩では神埼郡仁比山村(現・神埼市)出身で江戸に医塾を開設していた伊東玄朴が、藩主鍋島直正に導入を進言した。直正の命を受けた藩医楢林宗建は、オランダ商館医モーニッケの協力を得て、まず牛痘の膿を取り寄せたが効果はなかった。しかし日本の人痘法では、発疹のあとの『かさぶた』を使って成功した例があることから、次に牛痘のかさぶたをモーニッケから入手。まず、自分の息子に種痘し、効果を確認してから嗣子淳一郎への種痘を行った。
 牛痘法による種痘成功の知らせは全国に広まり、モーニッケの痘苗は江戸の玄朴をはじめ、各地の蘭方医に伝わっていった。牛痘法が短期間で全国に普及した背景には蘭方医がすでに牛痘法の知識を書物から得ていたり、人痘法を習得していたりしたという「在来知」があったと医療史研究家はみており、「人痘法を巡る試行錯誤の歴史が宗建に蓄積されていたからこそ『かさぶたを使えば成功する』という発想に至った」と指摘する。


牛痘法導入、「不治の病」追放

江島記者の話に耳を傾ける生徒たち(8月23日)=杵島郡大町町の大町ひじり学園

安岡公美先生 佐賀は幕末維新期に藩主鍋島直正を中心に、全国に先駆けていろいろなことに取り組みました。きょうは、そのうちの一つ「種痘」について学びます。記事を書いた記者さんたちに話を聞きます。
江島貴之記者 天然痘という病気の予防法を種痘と言います。天然痘はウイルスによって感染します。全身に発疹が出て高い熱が出ます。効果的な治療法はなく「不治の病」と恐れられ、流行すると多くの人が命を落としていました。皆さんはインフルエンザの予防接種をしたことがありますね。インフルエンザウイルスを弱めた「ワクチン」を人の体内に入れ、体をウイルスに慣れさせて、強いウイルスが体内に侵入しても発病しないようにするものです。
 日本にはこのころ、すでに「人痘法」という種痘方法がありました。これは、天然痘の患者から採ったウイルスから作った「痘苗」というワクチンを使いますが、そのまま天然痘を発症する恐れがありました。もう一つ、欧州では牛がかかる「牛痘」からの痘苗を使う「牛痘法」が行われており、人痘法よりずっと安全だということも日本に伝わっていました。しかし「頭に角が生える」などのデマが広がったりして、人々からは嫌がられました。

授業当日の佐賀新聞の紙面を見て、気になる記事を探す生徒たち

 直正の偉いところは、その牛痘法を国内でいち早く取り入れ、しかも、自分の息子(11代藩主直大)に真っ先に施したところです。「安全で効果がある」と分かっていたのでしょうが、親の気持ちとしては不安もあったと思います。そして、藩内に牛痘法を行き渡らせました。人々の命を守ることに力を入れた素晴らしい業績だと思います。
生徒1 ウイルスと細菌はどう違うの?
江島記者 どちらも肉眼では見えませんが、ウイルスは細菌よりもずっと小さいと言われています。ウイルスが原因となる病気はインフルエンザやノロウイルス感染症など。細菌性食中毒は細菌が引き起こします。細菌は放っておいても自分で増殖しますが、ウイルスは生き物の体内に入らないと増殖できません。
生徒2 牛痘法は「かさぶた」を使えばうまくいくと考えたのはなぜ?
江島記者 牛痘のワクチンを作るために、最初は膿を欧州から取り寄せたのですが、船で運んでいる間に腐敗してしまい、効果がありませんでした。しかし、日本の人痘法では発疹の跡にできるかさぶたを使って成功した例があったので、牛痘法にも応用できると考えたのだと思います。
多久島文樹デスク 直正は佐賀の殿様なのに、アヘン戦争で中国が英国に負けたのを知り「日本が危ない」と考え、大砲や軍艦をたくさん造りました。でも、戊辰戦争にはすぐには参戦しませんでした。なぜだと思いますか。
生徒3 直正は人の命を大事に考えていたから。
多久島デスク そうです。国内の戦争だと同じ日本人に向かって大砲や銃を撃たなければならない。だから参戦をためらったのです。牛痘法を広めたのと同じ「命を大事に」という考えですね。
安岡先生 150年前、直正という藩主のリーダーシップで佐賀が日本の発展に大きく貢献したことや、人々の命を守るために努力したことがよく分かりました。そして、新聞を読むことが知識を増やすためのひとつの手段となることを、皆さんもあらためて実感できたと思います。       

 

【授業を聞いて・みんなの感想】

古賀 莉子さん 出前授業を受けて、たくさん不思議に思っていたことが解決した。ウイルスと細菌の違いや「天然痘」とはどんな病気なのかが分かった。授業でたくさんの話をしてもらったので、次の日に見学に行った「肥前さが幕末維新博覧会」をより楽しめたし、いろいろな角度から見ることができた。

瀬野 光起さん 出前授業の前に、「種痘」についての佐賀新聞の記事を読んだ。幕末の佐賀藩主鍋島直正の功績が書いてあった。難しくて分からない言葉もたくさんあったけれど、その記事を書いた記者さんの話を直接を聞くことができてうれしかった。質問にも分かりやすく答えてもらい、「新聞記者ってすごいな」と思った。

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 政府が行った「幼児教育・保育の無償化」の調査結果について、自治体の反応を読み取り、政策を吟味して自分なりの意見をまとめることができるようにしました。主体的に考えることで、社会参画の意識を持てるように意図しています。(多久島文樹NIE推進デスク)

ワークシートのダウンロードはこちらから↓
「さが維新塾」の特設ウェブサイト
http://www.saga-s.co.jp/sagaishinjuku.html

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【問い合わせ】
佐賀新聞社営業局アド・クリエート部
☎0952(28)2195(平日9:30~17:30)
 

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