佐賀県知事選は16日の投開票日まで残り1週間。国策課題に対する現職と新人の考え方は、自衛隊輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画と原発問題で大きく異なっている。論戦で積極的に触れない現職に対し、対立軸を際立たせたい新人は前面に出して反対の論陣を張る。課題が横たわる現場の有権者は、平行線をたどる選挙戦を見つめながら複雑な思いを募らせている。

 佐賀空港へのオスプレイ配備計画に揺れる佐賀市川副町。「漁業振興、しっかり頑張ります」。駐屯地建設予定地の地権者でもあるノリ漁師が多い南川副地区に、現職の山口祥義候補(53)の声が響いた。

 事故への不安に加え、駐屯地が建設された場合の排水の影響を懸念しているノリ養殖者は少なくない。国は配慮する考えを示すが、諫早湾干拓事業での対応を念頭に不信感は根強い。

 作業中だったノリ漁師の川崎賢朗さん(58)は先回りして街演車を待った。車を止めた山口候補と握手を交わしたが、数秒だった。「顔を見せて、計画に納得していない漁師の不安を再認識してもらおうと思ったけれど、伝わったかどうか」。表情は険しかった。

 計画の受け入れを表明した山口候補は選挙戦序盤、県庁そばで「全体像、将来像も分からない中で結論を出してはいけないということで、さまざまなやりとりがあった。虚心坦懐(たんかい)にいろいろな人から意見を聴き、考えてきた」と理解を求めた。一方、新人の今田真人候補(72)は「オスプレイは危険」と受諾表明を批判し、撤回を求めている。

 川副町内では住民の会が、自衛隊との共用を否定した公害防止協定を勉強する集会を重ねている。出席した男性(71)は「もう配備が決まったと勘違いをしている町民もいる」と県側の説明不足を指摘し、選挙でも論戦を求めているが、現職側の言及は限られ、物足りなさを感じている。

 「有権者から聞きたいと言われれば、しっかりと説明する」と話す山口候補。ただ、陣営関係者は「国策課題の説明には時間がかかる。選挙期間は限られ、ゆっくりとどまるのは難しい」と話す。国策課題より県政の施策のアピールに軸足を置く戦い方が続く。

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 脱原発を公約に掲げる今田候補。九州電力玄海原発の地元、東松浦郡玄海町で街演し、巨大な原子炉建屋を望む値賀地区の高台でもマイクを握った。「ここで暮らし、宿や食堂を営む方がいる中で『原発なくせ』というのは心苦しい。しかし、言うべきことを言わなければ後世に禍根を残す」

 昨年4月に再稼働を認めた山口候補は、可能な限り原発への依存度を低減させ、再生可能エネルギーの導入を目指す考えを公約に盛り込んだ。選挙戦では「今そこに原発がある。いかに県民の安全を守っていくのかが大切だ」と訴える。

 原発から半径30キロ圏の唐津市鎮西町に住む会社員男性(60)は8日、市役所に期日前投票に訪れた。再稼働による経済効果を期待する一方で「避難計画の検証とか、安全対策に絡む九電への注文とか、次の知事には取り組んでほしいことがある」。課題の行方を案じている。

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