デビュー10年を迎えた「さがびより」。今年も店頭には新米が並んでいる=佐賀市のAコープ城南店

たわわに実った「さがびより」を収穫する生産者。10年間で味、品質ともに高い評価を確立してきている=10月、佐賀市内

高温に強く味も「最上級」

  佐賀県産米「さがびより」が、今年で本格栽培から10年目を迎えた。近年の温暖化に対応できる高温に強い品種として、県農業試験研究センターが開発。県やJAグループ佐賀が連携し、厳しい出荷基準を定めて収量の安定や品質の確保に努めてきた。日本穀物検定協会が実施する米の食味ランキングで最上級の「特A」を8年連続で獲得するなど味も評価されており、佐賀の「県民米」として着実に定着してきている。

 

 「雨が降らなかったので特に水管理に気をつけた。高温も少し心配していたが関係なかった」。10月中旬、佐賀市内のほ場。優れた栽培技術を持つ生産者「さがびより米(マイ)スター」の船津直行さん(69)は、黄金色の稲穂を前に手応えを語った。

 さがびよりは1998年に開発がスタートした。県全体の4割で作付けされていた主力品種「ヒノヒカリ」が、夏場の高温による収量減や品質の著しい低下が問題になっており、暑さに強い新品種の導入は急務だった。2007年に始まった現地適応性試験で高評価を得ると、09年、導入初年度としては異例の規模の1500ヘクタールで栽培が始まった。

 

「米スター」制度

 銘柄の確立のため、県とJAは指導が行き届くよう共同乾燥調製施設単位で作付け地域を限定し、栽培農家も登録制にした。専門の技術指導チームが各地を巡回したほか、タンパク質含有率6・8%以下など統一した出荷基準を設け、基準をクリアしたことを保証する専用の米袋も作った。作付面積が約3倍になった2年目には、栽培指針を生産者自身がアドバイスできるよう「米スター」の制度も設けた。県農産課の永渕和浩課長は「当時、特Aは東北の米ばかり。いい米を作ろうという意識はさがびよりで変わった」と振り返る。

 もっちりした食感や甘みが特長のさがびよりは味の評価も高く、正式出品初年度となる10年産でいきなり特Aを獲得。12年産以降はヒノヒカリや夢しずくを価格でも逆転し、現在は60キロ当たり1000円ほど高値で販売されている。大手コンビニチェーンのおにぎりや弁当にも使われ、JAさが米穀販売課の光岡正人課長は「卸や実需からはもう少し量がほしいという声をいただいている」と話す。

 一方、作付面積の拡大は当初の想定ほど進んでいないのが現状だ。県やJAはさがびより推進を打ち出しているが、本年産の作付面積は約5100ヘクタールで、県全体の2割ほどにとどまる。ヒノヒカリより刈り取り時期が遅く、裏作でタマネギを栽培する地域などはスケジュールが厳しい点が指摘される。また、害虫のウンカに弱いという課題も。当初は有効な薬剤があったが、中国などで同様の薬剤が使われたことで虫に抵抗力が付き、大発生した13年には大きな被害を受けた。

 

転作進む可能性

 ただ、本年産はウンカ被害はほとんど見られていない。また、県内で24年ぶりに39度台を記録するなど「命に関わる」暑さとなった中、ヒノヒカリの一等米比率が27・6%(10月末時点)と苦戦するのに対し、さがびよりは66・4%(同)と一定の水準を保っている。県、JAは今後、さがびよりへの転作が進む可能性があるとみている。

 さがびよりの8年連続の特Aは、継続中の記録では13年連続の佐渡コシヒカリ(新潟)に次ぐ2位タイ。「おいしいコメを作るというスタイルが生産者にも浸透してきたことで評価につながってきた」と永渕課長。一方で、米の消費量は年々減少し、国による生産調整の廃止で産地間競争が激しくなる可能性もあることから、こう訴える。「『実るほど 頭(こうべ)を垂れる さがびより』でなければならない」

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