2000年、小児がん経験者のサマーキャンプに参加した延哲也さん(中央)と稲田浩子さん(右)=山梨県

 在宅緩和ケアでがんと向き合う44歳の元高校教師の男性。医師として、妻として、長年寄り添ってきた小児科医(54)。26日、2人は佐賀市のアバンセで「最後の授業」に臨む。小児がんを経験し、教師になってからもがんの再発と闘い続けた。かつての教え子らも駆け付ける“教室”で、「今の自分だからできる、命の話を伝えたい」

 延(のぶ)哲也さん=大川市=は中学1年の時、小児がんの急性骨髄性白血病を発症した。当時は治癒率が2割の時代。3年に及ぶ壮絶な治療に耐えた。この時の経験が、「できるだけたくさんの人と出会いたい」と教師を目指すきっかけになった。

 20歳過ぎ、治療後の経過をみてもらう主治医として出会ったのが、現在は佐賀県医療センター好生館に務める小児科医の稲田浩子さんだった。意気投合し、小児がん経験者の会を立ち上げた。その後、延さんは福岡県で社会科の高校教師になり、夢をかなえた。

 2009年、38歳の延さんを大腸がんが襲う。小児がんの強い治療の影響で別のがんが発症する二次がんだった。手術や抗がん剤治療を続けながら、痛みに耐えて教壇に立ち続けた。再発、再々発。効果的な治療法がなくなっていき、どんな困難にも前向きだった延さんが1度だけ、「もういいかな」と稲田医師に弱音を吐いた。「いや、それは違うよ」。14年3月、稲田さんは妻として延さんを支えていく決意をした。

 昨年春、高校を退職し、在宅緩和ケアを受け始めた延さん。積極的な治療はやめても、最後まで積極的に生きることをやめるつもりはない。「誰も、いつの時も、限られた時間を生きている。これまで生徒たちに話してこなかった『命』について伝えてみたい。学校での本当の授業ではないが、みんなの前で話す姿を初めて妻に見てもらえるのはうれしい」

 「最後の授業」が開かれることは、かつての教え子の間でSNS(会員制交流サイト)を通して広がっている。稲田さんは「たくさんの人と出会いたくて教師になった。今できる話を存分にしてほしい」とエールを送る。

 最後の授業は26日午後2時からアバンセで。予約不要で誰でも参加できる。問い合わせはNPO法人わたしのがんnet、電話03(3466)1558。

【関連記事】
「悪い知らせ」の伝え方 医師ががん告知研修
武雄市の斎藤さん 亡き娘の「遺志」出版
がん緩和ケアの中で執筆 「農ひとすじ」自叙伝出版
佐賀県内、中3全員ピロリ菌検査 全国初
小学生からがん教育 医師、教員ら理解訴え

このエントリーをはてなブックマークに追加