2025年の国際博覧会(万博)の開催地が大阪市に決まった。テーマは医療や健康を中心とした「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。2800万人が来場し経済波及効果は2兆円が見込まれる。日本にとっては20年の東京五輪・パラリンピックに続く一大国際イベントとなる。

 東京五輪の準備を巡っては、過大な事業計画や国と自治体の費用分担の分かりづらさなどが問題となった。大阪万博は会場建設費で1250億円、運営費800億円、鉄道や道路などインフラ整備で700億円以上が必要と試算される。政府や大阪府などには、透明性の確保をまず求めたい。

 大阪では1970年に日本で初めての万博が開かれた。この大阪万博には6400万人以上が訪れ、高度経済成長時代の記念碑となった。大阪に繁栄をもたらしたという印象を持つ人は多く、この夢をもう一度という感覚もあるだろう。

 実際、70年万博に向けて大阪府などは交通インフラを整備、万博会場を含む一帯をニュータウンとして開発することで都市に流入する人口の受け皿をつくった。成功の裏にはしたたかな成長戦略があったと分析できる。

 70年の万博は開発型、あるいは国威発揚型と呼ばれている。一方、25年は長寿社会や持続可能な社会のあり方を探るいわば課題の解決策を示すタイプでの開催となる。

 会場は大阪湾にある人工島・夢洲(ゆめしま)だ。湾岸新都心として計画された一角にある。バブル崩壊もあって計画は頓挫し、落選した08年の夏季五輪では選手村が造られる予定だった。いわば使途が決まらない負の遺産の救済策とも言える。

 大阪府・市は、万博をてこにして地下鉄などを整備、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致も目指す。万博を方便として国の支援を引き出し、カジノにまでつなげようとするが、十分な採算性はあるのか。

 安倍晋三首相は「地域経済が活性化する『起爆剤』になると確信している」とするが、この事業さえ進めば大阪の経済が復活するという特効薬はない。

 大阪府は東京都と並び外国人が訪れる国内でも有数の観光地である。観光産業をどう伸ばしていくかが今後の課題だ。万博という一過性の手段やギャンブルで呼ぶよりも、大阪を含めた関西の楽しさを多様な方法で発信する方がより効果があるのではないか。

 大阪は家電メーカーの全盛期にはものづくりで知られたが、企業の本社機能が東京に転出したり、生産拠点が海外に移転したりするなど空洞化が言われて久しい。国内経済に占める大阪府の割合は70年度に10%あったが、近年は7%近くまで下がっている。東京一極集中が続くのは、大阪が経済的に地盤沈下しているのも一因だ。

 大阪市では15年に「大阪都構想」の賛否を巡る住民投票が行われたものの、僅差で否決された。大阪市を廃止して東京都のような特別区にすれば、大阪経済は復活するといった言説に市民は疑問を呈している。

 万博やカジノに対しても、都構想と同じように効果を疑う声もあるだろう。行政には丁寧な説明と合意形成を求めたい。一つ言えるのは、大阪経済の復活に必要なのは新しい産業を育てる地道な政策である。万博への過度な期待は危うい。(共同通信・諏訪雄三)

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