北海道函館市で水揚げされたスルメイカ。不正な漁獲品の輸入が国内の漁業者に損失をもたらす=2013年6月

 違法操業などで不正に漁獲されたイカの輸入が供給過剰と価格の押し下げを招いており、国内の漁業者が2016年までの26年間に1年当たり最大469億円の損失を被ったとの試算を、東京海洋大の松井隆宏まついたかひろ准教授らのチームが5日、発表した。「水産資源の保護に加え、経済の面からも規制強化が必要だ」と指摘している。

 違法漁業や、漁獲量を水産当局に報告しない漁は、世界的に問題になっている。欧州連合(EU)や米国は、多くの魚種の輸入時に漁獲証明書の提出などを義務付けているが、日本は大西洋クロマグロなど一部に限られ、対策は不十分だ。主要な天然水産物の輸入量の3割程度が不正な漁獲との指摘もある。

 チームは、日本がイカを多く輸入している中国とタイ、ベトナムに着目。別の研究で示された3カ国の不正漁獲量の推計値を活用し、不正に水揚げされたイカの輸入がゼロになった場合の影響を分析した。

 すると、供給量が減って品薄になるため国内で水揚げされたイカの価格が上がるなどして、1990~2016年の本来の水揚げ額は1年当たり243億~469億円多かったはずだとの結果になった。3カ国以外からの不正な漁獲品の輸入の有無や、加工品を含めるかどうかによって、金額に差が出るという。

 一方、国内でもアワビやウナギの密漁や無報告の漁業が横行し、対策の遅れが問題視されている。松井准教授は「輸入規制の強化に加えて、国内でもトレーサビリティー(生産流通履歴)を導入するなど徹底した対策が必要だ」と訴えている。

 イカ漁を巡っては、日本の排他的経済水域(EEZ)で中国や北朝鮮の漁船による違法漁業の報告もあり、日本漁船への影響が懸念されている。【共同】

このエントリーをはてなブックマークに追加