唐津東港にクルーズ船の寄港が続いている。28日は国内クルーズ船「飛鳥2」が入港し、これで10月は5隻となった。ここ10年、年間で1~3隻だっただけに、トピックスと言えよう。

 もう一つ特筆すべきことがある。このうち2隻は米国やドイツ船籍の外国クルーズ船で、今年に入って外国船は4隻となった。しかも3ランクに分類されるクルーズ船の中で、いずれも最上級のラグジュアリー船、いわゆる小型高級客船で、乗客は二百数十人だ。

 外国クルーズ船というと、乗客4千人超、十数万トン級の大型船をイメージする。博多港で見かける巨大なホテルのような客船だ。

 中国発着便を中心にクルーズ船が着岸すると、100台以上の大型バスが待ち受け、量販店に案内する。流行語にもなったが“爆買い”の特需をもたらしてきた。

 唐津市はそうしたクルーズ市場とは一線を画し、欧米の富裕層が乗る小型高級船に照準を当てた。

 切り札は唐津東港の立地利点だ。唐津港には5万トン級が接岸できる妙見埠頭(ふとう)があるが、貨物船を中心とした物流港で旅情などセールスポイントに欠ける面があった。

 2016年4月、唐津東港に耐震岸壁が整備され、2・6万トン級の船も接岸できるようになった。これを好機と、欧米の船会社や船舶、旅行代理店に対し、独自のポートセールスを行ってきた。

 船から唐津城や虹の松原を眺め、下りれば城下町の風情の中で唐津焼、茶道、人形浄瑠璃など和の文化を満喫できる。実際「船から見えたあの城に行きたい」とリクエストがあるという。

 来年は既に13隻の寄港が内定し、そのうち12隻は外国クルーズ船だ。「モノ」より「コト」、文化体験を重視する外国人観光客のニーズの変化に合致し、観光の新しい波を捉えたと言えよう。

 一方で課題も浮上する。英語圏だけでなくフランス、ドイツと多様化する外国人に対応できる通訳ガイドをどう確保するか。けがや病気など突発的な出来事にどう対処するか。観光地の展示説明や案内標識は多言語対応となっていない。カード決済機能も必要だ。

 ただこれらの課題はクルーズ船客に限ったことではない。これから拡大するインバウンド客、さらには国内観光客を受け入れる上で欠かせない観光インフラである。

 唐津には世界ヨット大会などで活躍するボランティアガイドの蓄積がある。カード決済やエアレジの導入講座も始まり、まちなかの呉服町商店街と唐津商工会議所女性会は外国人をもてなすためのプロジェクトに取り組んでいる。

 唐津市は観光都市を標榜(ひょうぼう)しつつ産業としての広がりがなかった。拡大するこの商機をどう生かすか。唐津市の庁内体制を含め、横断的な広がりの中で総合力を発揮する時だ。(吉木正彦)

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