鮮やかな実の写真とロゴデザインが入った「いちごさん」のポスター(県提供)

イチゴ新品種のブランド名「いちごさん」を発表した(右から)山口祥義知事、ロゴデザインの永井一史さん、名付け親の渡辺潤平さん=佐賀市

 佐賀県のイチゴ新品種のブランド名が「いちごさん」に決まった。県とJAグループ佐賀、生産者が一丸となり、7年かけて約1万5000株の中から選抜した。「さがほのか」以来20年ぶりの新品種で、産地間競争の激化や生産者の減少が続く中、県内のイチゴ生産を盛り上げる大きな役割を担う。16日のブランド発表会で関係者が語った、新品種やブランド名に込めた思いを紹介する。

数あるイチゴの真ん中に
 ブランド名開発 コピーライター・渡辺潤平さん

 子どもからお年寄りまでみんなに愛される名前、ロゴを開発しようと、1万5千とまではいかないが、かなりの数を考えた。あまたあるイチゴのブランドの中でも、ど真ん中に存在できるような、太くて大きくてかわいらしい名前とブランドの見え方にこだわった。

 日本中のイチゴの品種の名前を全部おさらいしてみて、そこで使われてない言葉で作ろうとした。すると大半が「味わい」の言葉で、「イチゴ」という一番大事な言葉がほぼなかった。この言葉を使えば、真ん中のいすに座れると思った。

 イメージしたのは、スーパーマーケットで小さな男の子や女の子がお母さんに「『いちごさん』買って帰ろう」と言っている光景。子どもも覚えやすく、みんなが口にできる名前というのは、佐賀のみなさんとの議論でも出ていた。一度聞いたら忘れられない名前を生み出せたと自信を持っている。「さが」が付いたネーミングの案もあったが、「さがほのか」のイメージが強い。大きく変わるには、名前の印象から一新した方がいいと思った。

 農産物の名前を付ける仕事は初めて。農家の人と話をする中で責任を感じた。それが自分を奮い立たせてくれた。

凜とした女性をイメージ
 
ロゴ開発 アートディレクター・永井一史さん

 「7年間」「1万5千株」「20年ぶり」という数字の重さも踏まえて名前やデザインを考えた。ただあまりその重さに萎縮(いしゅく)するのも良くないと思い、のびやかにいろんな人に愛されるものに、と取り組んだ。

 「いちごさん」という名前をデザインに落とす際には、名前が持つ愛らしさ、チャーミングさを文字に表し、深い赤やジューシーさ、おいしさや高い品質を保証する「ラベル」のような見せ方にしようと思った。「~さん」と人の名前のようになっているので、「『いちごさん』とはどんな女の子だろう」と想像を膨らませ、凜(りん)としたかわいらしい女性をイメージしたキャラクターにした。

 全国にたくさんの品種がある中で、人に直感的に覚えてもらったり、好きになってもらったりするには、いろんなことを考えないといけない。他と紛れてしまわないよう全然違う名前の付け方をすることで、デザインも他とはまったく違う、「いちごさん」ならではのものになった。

 「いちごさん」は味はもちろんだが、赤が本当に深く、見た目も含めてすばらしい。これから日本を代表するイチゴとして、広がっていけばうれしい。

【関係者ひと言】

 ■山口祥義知事

 理想のイチゴ、究極のイチゴ。凜と美しい色と形、華やかでやさしい甘さ、果汁のみずみずしさがある本物のイチゴでまさに「クイーン・オブ・イチゴ」だ。「さが」という文字を外すことには大きな決断があった。ただ、このイチゴのブランディングを考えると、私の思いは「世界制覇」。ど真ん中の「いちごさん」という名前で、生産者の方、JAの方と賭けてみたいということで一致した。

 ■JAさがの大島信之組合長

 高齢化や後継者不足、資材価格の高止まり、消費動向など、農産物の生産や販売は生き残りをかけた産地競争が激しさを増している。そんな中でみんなが期待していた「いちごさん」がデビューする。酷暑や台風の接近など気象条件が厳しい中、生産者のみなさんが非常に努力をしていただき、今順調に生育している。見た目も味も兼ね備えており、消費者のみなさんに本当に喜んでいただき、感動を与えられるものと確信している。

 ■開発プロジェクトチームの一員だった県園芸課の西美友紀主査

 みんなで育て上げていく子どものようなイチゴ。JAや協力していただいた関係者のみなさんと一丸となって作り上げたので、みんなに愛されて選ばれる品種になってほしい。

 ■生産者の森園文男さん(62)=みやき町

 「いちごさん」は甘くてジューシーで、食べた農家が笑顔になるほどのおいしさ。中も割ったら赤いのでジャムにも最適だ。いいものができる手応えはあるし、今年は成功させないといけない。

 ■生産者の寺田和弘さん(31)=みやき町

 これぞイチゴだというストレートな名前になった。就農して2年目。「いちごさん」はハウスの葉っぱの緑と真っ赤な実のコントラストがきれい。甘みや酸味のバランスもいい。

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