県警が配布しているニセ電話詐欺のチラシ

県と県警が作成したニセ電話詐欺防止を呼び掛ける啓発ステッカー/県と県警が作成したニセ電話詐欺防止を呼び掛ける啓発ステッカー

 「号泣していたよ」。警察署のロビーに捜査関係者の声が響いた。今年1月、ニセ電話詐欺で「受け子」として逮捕された少年=当時14歳=の取り調べや家族との面会での様子を聞くと、そう返ってきた。「意外だ」と感じる一方、「かわいそう」という思いもわいた。

 「受け子」は、ニセ電話をかけた被害者を訪ねて、現金を受け取る役回り。県や市の職員、被害者の子どもの会社の同僚などを巧みに装う。それに加担する少年たちは、罪の意識などはなく、反省の態度は示さない。そんな先入観があった。14歳、中学3年、そして逮捕、と連想してみる。身柄を拘束され、自分が犯した罪を追及される。そのとき初めて自分の犯した罪の重さに気付き、かなりの罪悪感が襲ったに違いない。

 大学を卒業し、入社後すぐ記者になって10カ月。司法担当として事件事故の取材を重ね、時に事件事故の背景に現実の厳しさや不条理さなどがあることを知るようになった時期だった。

 ニセ電話詐欺に関する知識は曖昧で、県警の重要課題になっていることも知らなかった。詐欺グループは複雑に組織化され全容把握が難しい、手口が年々巧妙化していることなど初めて知った。そうした中で詐欺に関与する少年が増えていると感じ、どういう経緯で犯罪に手を染めたのかを知りたいと思い、取材した。

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 受け子役がいれば、その受け子役を集める勧誘役も存在する。昨年12月、詐欺容疑で逮捕された男(33)は知り合いの少年を勧誘するなどし、何度も再逮捕された。

 勧誘役は「受け子が逮捕されても何とも思わない。道具にしか考えていない」という。「身に覚えがない」。初公判で起訴内容を否認した男は、終始うつむき気味でふて腐れたような態度だった。逮捕後号泣したという少年と好対照の姿が焼き付き、「とにかくクズだ」と吐き捨てた捜査関係者の言葉がよみがえった。

 先輩や知り合いから引き込まれるケースが多いという。逮捕されて初めて事の重大さに気付くという不幸な少年を1人でも減らしたい。そんな思いで、今年1月、少年が「受け子」として引きずり込まれるまでを記事に仕立てた。

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 県内のニセ電話詐欺の件数や被害額は、ほぼ横ばいに推移している。今年は大幅に減少してきているので、関係機関の対策が実を結んできた側面もあると思う。一方で被害が絶えることはなく、容疑者逮捕の記事を書きながら、「被害防止に貢献できているのか」との思いにとらわれることがある。もっとできることはないのかともどかしく思うことは少なくなかった。

 工夫を重ねて、いろんな角度から啓発を試みる。加害者側の目線に立ち、犯罪の仕組みや手口を詳しく伝えることも、新たな加害者を生むのを防ぐことにつながるとも感じる。4月から担当が変わったが、視野を広く持ち、自分なりの報道の仕方を模索していきたい。=おわり

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