自衛隊輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画受け入れを表明し、記者の質問に答える山口祥義知事=8月24日午後、佐賀県庁

 8月25日付の朝刊。新聞各紙には「唐突」「急転直下」との見出しが躍った。その前日、山口祥義知事は、自衛隊輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画に関し緊急記者会見を開き、受け入れを表明した。小野寺五典防衛相(当時)との会談から3時間後のことだった。「既に話はついていた」といぶかる漁業者もいた。

 知事と小野寺氏が向かい合った県庁の庁議室。小野寺氏は懸案だったコノシロ漁に対する騒音影響の再調査を約束したが、調査後の対応策は「協議する」と述べた。ところが続く県議会議長への説明では「実施する」。知事はすぐに真意の確認を職員に指示した。

 結果は小野寺氏の言い間違いで「実施する」が正しかった。「協議するだけだったら受け入れていない」。知事は後日の取材で、防衛省の意向をぎりぎりまで見極め、その日に決断したことを明かした。

 受諾表明当日は、そんな知事の逡巡にまで踏み込む余裕はなかった。大臣来県、100億円の基金創設を含む国と県との合意、騒音影響の再調査の約束、知事の受諾表明―。「大きな動きがある」と想定していたが、予想以上の展開を追いかけるのがやっとだった。

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 オスプレイ配備計画は、2014年7月に防衛省から県に要請があった。駐屯地は一度開設されると簡単には動かせない。ある県議は「県政史上、最も重い事案」と話す。後世の評価に耐えうる報道をしないと-。その緊張感、使命感は前任から引き継いでいる。

 本紙は配備計画の要請以前まで安全保障問題を取材する機会が乏しかった。試行錯誤しながら、事故の危険性や米軍利用の可能性など、さまざまな疑問点を連載で検証したり、識者の見方を報じたりして、問題提起を重ねてきたつもりだ。

 コノシロ漁への騒音影響調査を巡る8月21日の取材。太良町の県有明海漁協大浦支所に足を運び、説明会が終わるのを待つこと1時間半。「影響を断定することは困難」とした防衛省の見解に反発し、再調査を求めた漁業者に話を聞いた。

 「ここで何とか漁が続いているのは俺たちだけ。魚がいなくなれば伝統の投網漁は途絶えてしまう」。漁への影響は「補償や振興策ではなく生活の問題だ」との切実な訴えを聞いた。「記者さん、頼むけん見捨てんで書いてよ」。すがるような言葉もぶつけられた。この思いを伝えていくことが、地元紙記者の責任だと必死でペンを走らせた。

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 受諾表明後の9月に実施した県民世論調査では、配備計画に反対する意見が賛成を上回った。知事の判断は「国策追従」との批判もあるが、同時にそれは報じる側にも投げ掛けられうるとも感じる。抜け落ちた視点はないか、テーマ設定はずれていないか。賛成、反対双方の意見に耳を傾けながら、自問を繰り返す。

 現場で暮らす一人一人の声を丁寧に聞きながら、県民全てに関わる問題として粘り強く報じていく。それが地元紙の生命線であり、役割は一層増していると感じている。(県政担当・林大介)

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