幕末維新記念館を見学した感想を記す中学生。「佐賀はすごい」など好意的な内容が目立った=佐賀市

 「佐賀はすごい」「佐賀は日本の誇り」。幕末佐賀藩の功績を描いた映像を見終わった中学生の多くが、郷土とその歴史を好意的に捉える感想を書き残した。西有田中(西松浦郡有田町)の生徒が9日、肥前さが幕末維新博覧会のメインパビリオン・幕末維新記念館(佐賀市)を見学した。

 県内の小学4年~中学3年を維新博に招く事業の一環。こうした取り組みの効果もあり、3月に始まった維新博の来場者数は8月中旬、会期末まで5カ月を残して目標の100万人を超えた。来場者アンケートでも「とても満足」「やや満足」と答えた人の割合が9割に上った。

 記念館の大型スクリーンに映し出される、幕末佐賀藩の業績をドラマ仕立てで描く映像は迫力満点だ。強大な軍事力を持ちながら、内戦を避けたいとの思いから戊辰戦争への参戦を望まなかったとされる鍋島直正の苦悩が描かれる。

 直正は戦闘の犠牲を最小限に抑えるよう指示する。だが、その後に続くナレーションに違和感を覚えた。「佐賀藩の参戦により、国内の争いは早期に終結することとなった」。「戦争が早期に終結すること」は、短期間で相手に大きな打撃を与えることも意味する。

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 佐賀新聞は昨年から、明治維新150年の関連企画を展開している。記念館の映像を見て、幕末期の佐賀を描いた昨年の連載「さが維新前夜」での東北取材を思い出した。

 戊辰戦争で佐賀藩を含む新政府軍と戦った地域では、「戊辰150年」として記念事業が行われていた。戦争に敗れた側にとって「維新」という言葉が快いものではないことに、想像が及んでいなかった。記事では、戊辰戦争の場面で「活躍」や「威力を発揮」といった、一方の側に立った表現を避けるよう心がけた。歴史は多面的に見なければ、多様な教訓やメッセージをすくい上げることはできないと気付かされた。

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 今年1月から連載中の「さが維新ひと紀行」では、県内各地にゆかりの偉人と呼ばれる人々を取り上げている。中には史料や研究者が限られて、その人物像や功績を描き出すのに悪戦苦闘することも少なくない。だが歴史の積み重ねの中で埋もれそうな人々に光を当てて、紙面に記録して後世に伝えることも新聞の役割だと考えている。

 その意味で150年目の節目が終わった来年以降の取り組みも重要になる。佐賀大学地域学歴史文化研究センターの伊藤昭弘准教授(47)は「評価する時代の状況や新史料の発見によって、歴史研究は塗り替えられていくもの。新聞も継続して歴史を取り上げてほしい」。歴史学の特質も踏まえて新聞に注文する。

 明治維新150年を節目として終わらせず、歴史からの学びを深める契機にしたいという思いは同じだ。敗者の視点に目を配りながら、偏りなく、真摯しんしに歴史と向き合い続けたい。(特報班・江島貴之)

 ※この連載へのご意見やご感想をお待ちしています

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