西日本豪雨の取材で撮影したJR筑肥線の脱線現場の様子。本紙ウェブサイトの速報に添えた=7月6日、唐津市浜玉町

 県内に初めて大雨特別警報が発令された7月6日。午後3時半すぎ、県警担当記者から「浜玉町で電車が脱線した」と連絡が入った。すでに唐津支社の後輩記者は、土砂崩れに車が巻き込まれた道の駅厳木で取材中。現場に向かった。

 本紙は佐賀市の本社に加え、県内7カ所に支社局を配置。各エリアで突発的な事件事故が起きれば、すぐに記者が駆けつける。中国・四国地方中心に220人を超える死者を出した西日本豪雨では、県内も甚大な被害を受け、紙面に加え、ネット速報にも力を入れて報道した。

 浜玉町の脱線現場では、近づこうとすると、警察官から「二次被害の危険性がある」と制止された。400メートルほど離れた玉島川河口に下がり、大量の土砂で線路が寸断されている様子を撮影。「乗客ゼロ」との情報に胸をなで下ろした。

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 すると、今度は「七山で裏山が崩れ、80代女性が土砂に埋もれた。取材を」と本社からの指示。現場の記者全員に「無理はしないように」と注意喚起もあった。大雨特別警報の緊急メールが入り、緊張感が増す。

 「女性は救助」との一報に七山行きをやめようとしたころ、周辺住民に電話で状況を確認していた支社長から「女性の家族が避難所にいる。話を聞けないか」と避難所を教えられた。玉島川沿いの国道を上れば七山。車を少し進めたが、路肩に止め、考え直した。

 救助の状況を家族の言葉と共に伝えられれば、記事に臨場感や奥行きが出る。だが、川の濁流はすさまじく、周囲の山肌にも小規模の土砂崩れがあちこちに見られる。災害に巻き込まれるかもしれない。取材活動で救助の手を借りれば、愚の骨頂。家族の顔も浮かび、行くのをやめた。

 翌日、出直すと、やはり国道は所々で土砂崩れに遭い、ガードレールが折れ曲がった場所もあった。災害時は自分の身を守ることが大事だと記者20年目で改めて痛感。大雨の恐怖に共感しながら家族に取材し、高校生の孫らによる救助劇として8日付で掲載された。

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 近年、「想定外」の災害が頻発し、災害時報道は、速報とともに、きめ細やかな情報提供のニーズが一層高まっている。だが現実的には災害の大きさや種類によって、現場に向かうのが難しかったり、すべてをカバーできない場合も出てくる。

 今回の豪雨でも、発生直後から即座に伝え切れていない被災箇所もあった。筑肥線では、脱線があった福岡方面の状況は逐一伝えてきたが、伊万里方面の被害は数日出遅れた。同時多発的に災害が起きると、被害が大きなもの、目立つものに目が行きがちになる。生活道路が土砂崩れで寸断された伊万里市東山代町滝川内の集落の状況も後日、住民の声を交えて伝えた。

 県内に一番多く記者がいる地元紙だからこそ、できること。経験を蓄えながら、災害時や被災後に頼りにされる存在になりたいと思う。

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