古武雄コレクションに情熱を捧げた故中島宏さん

中島宏さんが寄贈した「古武雄」の逸品が並ぶ会場=有田町の県立九州陶磁文化館

中島宏さん「青瓷彫文壺」(口径20・9センチ、胴30センチ、高さ40センチ、底径14・9センチ、第40回伝統工芸展出品、県立九州陶磁文化館)

「鉄絵緑彩松樹文大皿」(口径47・3センチ、高さ17センチ、底径14・2センチ、県重要文化財、県立九州陶磁文化館 中島宏コレクション)

「緑褐釉櫛目草文大皿」(口径49センチ、高さ15・3センチ、底径17・3センチ、佐賀県立九州陶磁文化館 中島宏コレクション)

「鉄絵緑彩岩松樹文甕」(口径30・9センチ、高さ34・1センチ、底径15・8センチ、佐賀県立九州陶磁文化館 中島宏コレクション)

「鉄絵緑彩山水文大皿」(口径49・2センチ、高さ14・3センチ、底径16・9センチ、佐賀県立九州陶磁文化館 中島宏コレクション)

「象嵌鶴文水指」(口径12・8センチ、高さ18・8センチ、底径13・7センチ、佐賀県立九州陶磁文化館 中島宏コレクション)

「白泥鉄絵緑彩松樹鶴文甕」(口径34・5センチ、高さ28センチ、底径16・5センチ、佐賀県立九州陶磁文化館 中島宏コレクション)

 緑褐釉(りょくかつゆう)の流しがけの大胆さに、松をモチーフとした松樹文の豊かな絵画性、印花・象嵌(ぞうがん)のデザインの繊細さ。重要無形文化財保持者だった故中島宏さん(今年3月死去、享年76)が県立九州陶磁文化館に寄贈した「古武雄」コレクションには、個々の名品が放つ迫力とともに表現の多彩さに圧倒される。

 中島さんは、地元武雄市の古窯から出土する陶片を皮切りに、江戸期に武雄で焼かれた陶磁器に魅了され研究を進めた。熱意と愛情を込めて収集したコレクションは、2002年に東京・根津美術館で開かれた「知られざる唐津」展で初展示。13年には全国巡回展があり、歴史にうずもれた「古武雄」に光を当てた。今回は昨年寄贈された600点超の「中島宏コレクション」から約200点の逸品を披露する。

 同館の藤原友子学芸員は「『古武雄』の核となる部分は、地元で豊富に産出された白化粧土の活用」と言う。中でも鉄絵と緑釉の組み合わせは特徴的な装飾技法の一つ。県重文の「鉄絵緑彩松樹文(てつえりょくさいしょうじゅもん)大皿」は、50センチに迫る口径に枝を伸ばした松が躍動する。

 鉄絵の伸びやかな線で描かれる松の幹と緑釉のみずみずしい緑が印象的な「鉄絵緑彩岩松樹文甕(かめ)」。かつて「二彩唐津」と呼ばれた様式で、自然の力強さを表現する。「緑褐釉櫛目草文(くしめくさもん)大皿」は、織部釉とも呼ばれる緑釉と鉄分が褐色を呈す褐釉が流しかけられる。大胆な即興性は陶工たちの自由な芸術性を見せる。

 生地に型を押し当てて文様を刻む印花や象嵌も重要な技法。象嵌文の大皿のデザインは現代的な香りも漂わせ、「象嵌鶴文水指(つるもんみずさし)」は鶴文を絵画的に表現する。また、17世紀初頭までの明代に中国南部で生産された華南三彩壺を手本にした耳付きの壺も、古武雄に特徴的な器の種類だ。

 「古武雄」は、中島さんが生涯をかけて古唐津に埋もれていた武雄地区の陶磁器を再発見、評価した言葉だ。今後、古陶磁研究で定着するかは分からないが、「佐賀の豊かな陶磁文化を表現する言葉でもある」と藤原学芸員は強調する。

 中島さんの作品も2点出品され、会場を埋め尽くす「古武雄」の中でひときわ光を放つ。妻の寿美子さんは、「(中島さんが)仕事の合間にホッとした顔つきで古武雄を眺めていた」と振り返る。「当時の陶工の仕事に思いをはせ、時にインスピレーションを受けて作陶に向かっていた」ともいう作品は、やはり唯一無二の青が胸に迫る。

 中島さんがコレクションを同文化館に託したのは、自身や県内の陶芸家が「古武雄」から学ぶことができるように、という気持ちもあったという。中島さんの魂がこもった「古武雄」が、県陶芸界の道しるべの一つになることを願う。

 ▼「古武雄-ふるさと大地の記憶」は有田町の県立九州陶磁文化館で11月25日まで。観覧料は大人600円、大学生300円、高校生以下、障害がある人とその介護者は無料。問い合わせは同館、電話0955(43)3681。

このエントリーをはてなブックマークに追加