踏切での列車の人身事故で現場検証する警察官ら。佐賀県内では踏切での死亡事故が続いている=6月、小城市牛津町

 佐賀県で踏切内での事故や自殺が相次いでいる。6月には小城市の踏切内で軽自動車に乗っていた20代の女性が、8月には武雄市の踏切内に入った中学生男子が列車にはねられて亡くなった。鉄道事業者は、駅構内での事故・自殺対策としてホームドア設置などの試みを重ねているが、踏切に関しては抜本的な解決法を見いだせていない。

 JR九州によると、本年度、同社管内で自殺と報告があった件数は9月3日現在で15件。前年度は25件で、これを上回るペースで推移している。県内のJR路線では4月以降、踏切内での死亡事案が少なくとも7件発生、月1件程度のペースで、自殺とみられるケースも含まれる。

 自殺対策を研究する早稲田大学の上田路子准教授によると、全自殺者数は、ピーク時(2009年)と比べて約3割強減少しているが、鉄道での自殺者については減少幅は小さいという。「鉄道自殺は若年層に多い。中高年の自殺は近年減少したが、若年層は減っていないことが影響しているのでは」と話す。

 対策として、遮断機や警報器がなく危険度が高い踏切の改良などが進められてきた。佐賀県警によると、2012年10月に杵島郡江北町にある警報器だけの「第3種踏切」で列車と自転車の衝突事故が発生、遮断機と警報器がある「第1種踏切」に変更した。ただ、踏切が生活道路の一部になっているケースが多く、遮断機の設置で利便性が低くなることに抵抗感を示す意見も少なくないという。

 全国の取り組みを見ると、JR西日本は、うつろな目をして線路をのぞき込むなど、自殺を考える人の特徴を踏まえて駅員や警備員が声掛けを行い、啓発ポスターの張り出しを重ねる。関東地方の私鉄では、気持ちを落ち着かせる効果があるとされる「青色照明」を駅構内や踏切に試験的に設置、その期間は自殺者がほとんど出なかったという。

 JR九州は、駅構内での事故防止に関しては、バー式の「軽量型ホームドア」の実証実験を進めるなどしている。踏切については有効な対策を示すことができず「永遠の課題」と苦しい内情を話す。

 鉄道自殺を巡っては、事業者が遺族に、振り替え輸送費や車両修理費など賠償金を請求するケースも少なくないという。鉄道事故裁判に詳しい佐藤健宗弁護士(兵庫県明石市)は「乗客や鉄道会社、ひいては経済にまで大きな影響を与えることを知っておくべき」と指摘し、こうした情報の周知が必要との見方を示す。

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