嬉野市を訪れた寺田さん夫妻。右は肥前夢街道の役者・神谷弦二郎さん=嬉野市の肥前夢街道

 「車いす押してもらえませんか」。ボードを掲げながら、旅先で出会った人に車いすを押してもらい日本一周の旅を続ける寺田湧将さん(28)=東京都=が9日、嬉野市を訪れた。肥前夢街道で忍者ショーを観覧した寺田さん。健常者と障害者が気軽に手を取り合える社会にしたいと、車いすでの旅を通じてメッセージを送り続けている。

 寺田さんが旅を始めたのは2017年4月から。車いすを押してもらったり、ヒッチハイクをしたりしてこれまでに25道県を訪れた。全国各地で計378組が車いすを押してくれたという。8月から西日本を旅していて、今年初めに結婚した真弓さん(27)もカメラマンとして加わった。

 ただ、車いすを使うまでは外に出ることをためらい、ふさぎ込む日々が続いていた。寺田さんは脳性まひで生まれつき脚に障害がある。足を引きずって歩くことはできるが、「歩く姿を人に見せたくない」と消極的だった。障害者と思われることを恐れ、車いすを使うこともなかった。

 転機は、20歳を過ぎて初めて乗った車いすでの体験。「友人と話しながらいろんな場所に行けたり、移動範囲が広がったり、革命的だった」。車いす生活を始めて最初にできた友人から、飲み会後に「飲酒運転?」と笑い合うこともあった。「体のことを笑いにすることは抵抗があったが、『笑ってもいいんだ』と感じ方に変化が起きた」と、障害を前向きに捉えられるようになっていた。その後、大学在学中に英国へ1年間留学、お笑い芸人を目指したり、東京・歌舞伎町でホストとして働いたこともあった。

 寺田さん夫妻は、8日に長崎県の佐世保市からバスで嬉野市に入った。肥前夢街道へ続く坂道で車いすを押してもらった。夢街道の女忍者「お鈴」らも手伝い、旅を後押しした。

 佐賀を出発した後は、福岡、熊本など九州を巡る予定。寺田さんは「車いすの利用者や一歩が踏み出せない人の後押しになれば。気軽に助けてと言えるような社会にしたい」と前を向く。その上で「車いす旅行者でしか分からないバリアフリーの視点や、訪れた場所の魅力も伝えていきたい」と話す。

 旅の様子は動画投稿サイト・ユーチューブの「寺田家TV」で配信している。

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