一生のうち5人に1人が心の病気「うつ」にかかるというストレス社会・日本。うつ病は、どの年代の誰もがなりうる病気です。特に女性はライフイベントと女性ホルモンが関係して、男性よりうつになりやすいといわれています。半世紀にわたり、地域の心の健康をサポートしてきた光風会病院(みやき町)の江本すずな院長に女性のうつについて話を聞きました。

うつの改善には「話す」が効果的

 うつは気分障害の一つです。気分が落ち込む、疲れが取れない、頭が働かないなどの精神的な症状、食欲がない、眠れないなど身体的な症状が現れます。主な原因は「ストレス」です。

年齢で変化する役割

 女性が男性よりうつになりやすい理由は二つ。一つは年齢で変化する役割。男性の家事や育児参加が進んではいるものの家庭内で妻、母、嫁として1人で何役もこなさなくてはいけません。また年齢とともに職場では責任が重くなり、子育てを卒業しても親の介護などいくつも役割が変化します。変化にはストレスが伴いますから、女性は常にストレスにさらされているというわけです。専業主婦にしても、仕事と家庭の両立をしている女性にしても、疲れていても長期休暇を取って日常から離れることは難しい。ストレスを抱え込んだ状態が続き、うつになる方が多いようです。
 家庭で女性がうつになると、今までやってきた仕事や家事がうまくできなくなっていきます。そこで夫が慣れない家事や子育ての役割をすべて担うことになり、ストレスからうつ状態に陥る男性も増えています。そんな家庭の状態に子どもたちも気分が落ち込こむという悪循環が生まれてしまいます。

 

年代ごとに女性ホルモンが影響

 二つ目は女性ホルモンです。女性は一生涯、女性ホルモンの影響を受け気分(感情)の波がありますが、大きく四つの時期に大別できます。①思春期―女性ホルモンが増え心や体が変化していきます。太ってもいないのに太っているからと、極端なダイエットをして摂食障害に陥る危険があるのもこの時期です。②結婚・出産期―生活ががらりと変わる時期。「産後うつ」の言葉をよく耳にすると思いますが、産後は女性ホルモン「エストロゲン」が減るため、気分が落ち込みやすくなります。③更年期―閉経を迎えエストロゲンが極端に減り、わけもなく落ち込んだり、イライラしたりします。子どもが巣立った寂しさもストレスになって更年期うつになることも。④老年期(60代くらいから)―何が不安か分からないけど、とにかく不安と訴える人が多くなります。家族、友人の死による喪失感、病気ではないけど体調が悪い、家族間のつながりが希薄で会話がないことなどが発症の引き金になります。

生真面目で几帳面な方は要注意

敷地内にある「森のシアター」。江本院長が奏でるピアノで音楽療法も

 うつになりやすい人は、生真面目で几帳面な人。スーパーウーマン症候群に代表されるようになんでも完璧にこなし、良い社会人、良い母、良い妻であろうとするとストレスがかかります。時には手を抜き、カラオケや友人とランチに行くなど好きなことをして、ストレスを発散しリラックスしましょう。話をすることでストレスから解放されることも多々あります。「夫は何も手伝わない」「姑が子育てに口を出す」など会話の中身はなんでもいいのです。心療内科を受診しにくいという人は、親友でも誰でもいいので話をすることが大事です。
 周囲の方は、もし相談者から「死にたい」といった言葉が出るようでしたら、専門医の受診を勧めてください。重症になると、お薬や入院治療が必要な場合があります。
 当院では女性専用ストレスケア病棟を備えています。うつのサインは「食欲がない」「眠れない」など、日常生活にも現れます。気になる方は一度相談してください。
 人生は山あり谷あり。ストレスを抱え込む前に女性特有の「おしゃべり好き」を発揮して、ストレス発散してください。

【MEMO】

■女性専用ストレスケア病棟

 

 女性に日常から離れて休養してもらう女性専用のストレスケア病棟。仕事や家事にフル回転した頭と体を休めてエネルギーを充電したところで、作業療法(音楽療法)などで生活リズムを整え、気持ちをコントロールできるように治療を進めていきます。さまざまな悩みを抱えながら、仕事と子育てを両立した経験を持つ江本院長とスタッフがサポートします。



医療法人光風会 光風会病院 理事長・院長

江本 すずな

 

えもと すずな 1991年、福岡大学医学部卒業。福岡大学病院麻酔科、福岡逓信病院麻酔科勤務などを経て2000年から光風会病院理事長。2010年から院長。

 

 

 

 
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