世界でもトップクラスの長寿国・日本。平均寿命は女性86.61歳、男性80.21歳です。厚生労働省は健康増進の基本方針「健康日本21」の中で、健康寿命を延ばすことを目標に掲げています。80歳を超えても、自分の歯はもちろん、入れ歯でもしっかり噛んで食事を楽しめることが健康にとって一番大切です。予防歯科の大切さや、生活のクオリティーを保持する歯科治療について、森永歯科クリニック(佐賀市)の森永大作理事長に話を聞きました。

インプラントで自立支援・介護予防

歯をなくさないための予防歯科

 歯がなくなって口からしっかり物を食べることができなくなった人たちは何でもよく噛めるという人たちに比べ、寝たきりになる確率が高いということが最近の調査で明らかになってきました。
 日本人が歯を失う原因の約9割がむし歯もしくは歯周病です。歯の数は50代前後から急に減り始め、80~84歳で1人平均14本、85歳を過ぎると10本以下と永久歯は半分も残っていない状況になります。
 むし歯や歯周病など口腔環境をケアし、歯を長く健康に維持することが非常に重要です。当院ではむし歯と歯周病のリスク診断や歯の健康を維持する定期健診、セルフケアの指導など、「予防プログラム」を実施しています。子どもの時期だけでなく、大人になっても口の健康を維持するための「予防歯科」は重要です。

口腔機能の低下で誤嚥性肺炎が増加

 高齢になるに伴い食べこぼしや食事中の「むせ」、うまく飲み込めないなどの症状が出てきますが、これは口腔機能の低下を表す症状です。
 しっかり噛むことができれば食事を楽しめるだけでなく、舌の運動を含めた口腔機能の維持につながり誤嚥性肺炎の予防、そして寝たきりの大きな原因である転倒といったリスクを軽減して健康寿命を延ばすことにつながると言われています。

インプラントで天然歯を守る

抜歯後インプラント治療を行い10年経過しているが、インプラント治療後一本も歯を喪失していない

 高齢になるほど歯を1本失うと、他の歯への影響が大きく、ほかの歯もドミノ倒しのように次から次に弱って抜け落ちてしまうことがあります。歯の欠損があるレベル以上になると入れ歯やインプラントを使っても口腔機能の回復が非常に困難になります。歯がなくなった時、失った歯を補うための「部分入れ歯」、両脇の歯を削ってつなげる「ブリッジ」といった治療が必要ですが、残った自分の歯をどうやって健康に維持していくかも非常に重要で、インプラントは他の歯への影響も少なく、天然歯の保護に大きな力を発揮します。見た目も噛む力も自分の歯と変わりません。(図1、図2)

入れ歯へのインプラント応用

入れ歯の使用で骨が細くなっている

 先に述べたようなブリッジ治療ができない程、多くの歯を失くした人はプラスチック製の部分入れ歯を使用されていますが、しなりやすいのが欠点で、食事のたびに噛む力があごの骨を刺激するために骨が薄くなっていきます。そうなると、入れ歯が合わなくなってしまい、痛くて物が噛めなくなったり、会話するたびに「かぽかぽ」と脱落してしまうことも。高齢者には特に大切な咀嚼嚥下の支障になり、食事も楽しさも半減して、健康にも影響が出てしまいます。

1本のインプラントで部分入れ歯を固定

 そうした場合には最小限のインプラントで入れ歯を固定することで、機能回復を図ることができます。入れ歯が固定されるため、食事や会話に支障がありません。インプラントを併用した入れ歯「インプラントオーバーデンチャー」は、最小限の1~4本のインプラントをあごの骨に埋め込み、そこにスナップボタンのように入れ歯を装着します。入れ歯がぐらつくことはなく、噛む力を取り戻すことができます。脱着が簡単ですから、施設に入所されている人でも、職員や家族が歯磨きのサポートをして口腔内の清潔を保つこともできます。認知症が進んだ場合など、必要があればインプラントの部分にふたをして使わないようにすることも可能です。
 インプラントは、あごの骨に穴をあける手術が必要です。糖尿病などの病気を抱えている人は担当医師の確認が必要になりますが、クリアできれば年齢に関係なくインプラント義歯は可能です。
 まずは予防歯科で生涯楽しく食事ができる口腔環境を整えて、歯を失ってもいくつかの選択肢の中から噛む力を維持していきましょう。


森永歯科クリニック 理事長

森永大作

 

もりなが だいさく 医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。2000年福岡歯科大学卒業後、久留米大学医学部口腔外科へ入局。2005年久留米大学大学院修了。日本口腔外科学会会員、日本歯周病学会会員、日本臨床歯周病学会会員。

 

 

 

 
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