仕込みをしながら、38年間を振り返る永渕洋三さん=佐賀市の焼き鳥「あぶさん」

佐賀の野球関係者らに愛された「あぶさん」=佐賀市柳町

 元プロ野球選手で、野球漫画「あぶさん」のモデルにもなった永渕洋三さん(76)が営む焼き鳥店「あぶさん」(佐賀市柳町)が、10月で閉店する。現役引退の翌年1980年から、夫婦2人で切り盛りしてきた店には全国から野球ファンらが訪れたが、体力的な問題もあって閉店を決めた。常連客に惜しまれつつ38年の歴史に幕を下ろす。

 永渕さんは、佐賀高(現佐賀西高)野球部で左腕のエースとして活躍。社会人の東芝を経て、1967年にプロ野球近鉄バファローズに入団すると、2年目の69年にはパ・リーグ首位打者に輝き、球界を大いに沸かせた。酒豪で知られ、二日酔いで3安打放った逸話から、水島新司さん原作の「あぶさん」のモデルになったことは有名だ。

 引退後、故郷で焼き鳥店を開くことを選び、水島さんの了承を得て、店名は「あぶさん」に。輝かしい野球人生に区切りをつけ、「プロ野球中継は見ない」といい、店内には野球に関するものは飾らない。酒を片手に串を焼く姿は、酒豪でならした現役時代をほうふつとさせる。

 遠方から訪れる野球ファンは多く、「初めの頃は、ビデオテープのように現役の頃の話を何度もしていたなあ」と永渕さん。華々しい栄光を鼻にかけることなく、実直な人柄と温かさに引かれる客は多い。

 高校時代のチームメートで、開店時から通う金子一彦さん(76)は「高校時代の友人や野球部の集まりはいつもここだった。生活の一部で人生の半分はお世話になった」と惜しむ。

 「さびしいねえ。うちの(妻・正江さん)は長かったと言うけど、あっという間だったね」と永渕さん。自身がモデルとなった「あぶさん」の主人公・景浦安武選手は、酒豪の強打者として62歳まで37年間、プロ野球の第一線で活躍したという設定。その主人公を超える38年間の「現役生活」を振り返り、「最初は何年持つか…と思っていたが、子どもも独立して、親の役目も果たせた。孫が焼き鳥を食べにくるのはうれしかった」と笑顔を浮かべた。

 10月中は永渕さん一人で切り盛りする予定だが、閉店日はまだ決めていない。品数を減らし、カウンター席のみで営業する。

このエントリーをはてなブックマークに追加