睡眠の質が良くないと日中に強い眠気に襲われ、生活に支障をきたす不眠症になります。さらに、不眠症は心筋梗塞や脳血管障害など生活習慣病を併発するリスクが高まると言われています。質の良い睡眠を手に入れるにはどうしたらいいのか。睡眠時無呼吸症候群の原因や治療方法を含め、睡眠に関する話を佐賀大学医学部附属病院循環器内科、内科学講座の野出孝一主任教授にうかがいました。

寝る前の飲酒、喫煙は大敵

 不眠症のタイプは大きく分けて4つ 

 

 不眠症には、なかなか寝付けない「入眠障害」、朝早く目が覚める「早朝覚醒」、深夜に目が覚める「中途覚醒」、寝た時間の割に熟睡した感じがない「熟眠障害」があります。入眠障害は比較的若い人に多く、年をとると早朝覚醒の傾向が強まります。
 高齢者の早朝覚醒は生理的なもので病気ではないため、治療の必要はありません。一方、若い人が入眠障害や早朝覚醒による睡眠不足が続いたり、ふらつきやめまいを覚えるのは不眠症の疑いが強く、治療が必要です。依存性の弱い睡眠薬も登場していますので、専門医の診察を受けてから処方してもらってください。

 寝酒は睡眠に逆効果 

 寝つきを良くしたいと就寝前に飲酒をする人が多いようですが、確かに寝つきは良くなるものの深夜、中途覚醒してしまい睡眠の質は低下します。寝る前の喫煙も入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒のいずれかを引き起こします。飲酒と喫煙は睡眠にとって大敵なのです。また、寝る直前までテレビを見たり、スマートフォンを操作している人も多いと思いますが、過剰な光の刺激を受けると、目がさえて眠れなくなります。
 自律神経には交感神経と副交感神経の二つがありますが、質の良い睡眠を手に入れるためには、副交感神経を優位にさせて「リラックスモード」に切り替えることが大切です。先に述べたとおり、寝る前には刺激の強い光を浴びないようにし、過剰な運動は控えること。ストレスのコントロールも必要です。就寝前の入浴は睡眠に効果的。ぬるめの湯に入ると全身に血液が行きわたり、副交感神経が活性化してリラックスでき、眠りにつきやすくなります。

〝何時に寝るか〟より〝生活リズム〟が大事 

 睡眠時間が一番長いのはフランス人で平均7時間40分、一番短い日本人は平均約7時間です。適正な睡眠時間は人によって違いますから、快適に目覚められる睡眠時間を自分自身で探してください。休日に「寝だめ」して体を休めようとする人もいますが、寝過ぎてしまうと夜、眠れなくなります。生活リズムを崩さないように普段の起床時間の2時間後には起きるようにしましょう。
 仕事の都合で深夜に働く人もいらっしゃるでしょう。大切なのは、昼夜逆転の生活でも▽起床時間、働く時間、寝る時間など自分のリズムをつくる▽そのリズムに合わせて食事時間を整え、暴飲暴食をしない▽寝る時間に合わせて飲酒や喫煙を控える―ことです。生活リズムを整えることできちんとした睡眠がとれるようになります。


■  睡眠時無呼吸症候群

大きないびきは危ない循環器系疾患のリスク高める

 

 いびきに悩まれている方も多いでしょう。睡眠中にのどや鼻の気道のどこかが狭くなると、いびきをかきやすくなりますが、実は、大きないびきは睡眠時無呼吸症候群(SAS=スリープ・アプニア・シンドローム)のサインの一つでもあります。
 SASは不眠症の中で一番多い症状で、睡眠中に気道が閉塞して何度も呼吸が止まり、息苦しくなってぐっすり眠ることができない病気です。起床時の頭痛や体の節々の痛み、日中に強い眠気に襲われるなどの症状があります。また、睡眠時に酸素を取り込めないと、交感神経が活性化して血圧上昇や血管収縮を引き起こし動脈硬化が進行します。SAS患者の約半分に高血圧や不整脈の症状が見られるなど、脳血管障害、心筋梗塞など循環器系の病気を併発するリスクが高くなるのです。
 主な原因は肥満です。そのほか扁桃肥大などの耳鼻科疾患、舌根(舌の付け根)周囲の筋肉が弱って気道に向かって下がることなどが挙げられます。

検査と治療方法 重症患者にはCPAP治療

 

 無呼吸は自分では分かりにくいものですが、「いびきがうるさい」と指摘されたり、夜中に何度も目が覚めるようであれば、まず近くのかかりつけ医に相談を。SASが疑われたら、専門医を受診し適切な検査・治療を受けてください。
 佐賀大学医学部附属病院でもSASの検査・治療に当たっています。まず、自宅で簡単にできるスクリーニング検査を行い、異常があれば1泊入院して精密検査を行います。SASが判明すれば、肥満や耳鼻科疾患などの原因が隠れていないか探します。肥満がある場合はまず減量を、飲酒が舌根周囲の筋肉を弛緩させて気道に沈下する原因になっているのであれば、飲酒を控えるように指導します。いびきも同様ですが、気道が圧迫されないように横向きでの睡眠も効果的。また、気道の閉塞を予防するマウスピースを入眠中に装着することで改善が見られる人もいます。
 重症の患者さんにはCPAP(シーパップ)治療を行います。簡単に言えば、気道に陽圧(空気の圧力)を持続してかけることによって、気道の閉塞を予防する治療です。このため、入眠時に専用のマスクを装着してもらいますが、2週間くらいで効果が出て、いびきもなくなります。十分に酸素が取り込まれるようになると血圧の低下や不整脈の改善が見られ、高血圧や心筋梗塞などの病気の併発予防にもつながります。
 SASの治療方法は確立されていますので、気になる方はいち早く医療機関を受診し、健康な眠りを取り戻しましょう。

 

佐賀大学医学部 内科学講座主任教授

野出  孝一 氏

 

ので  こういち 1988年、佐賀医科大学卒業。95年、大阪大学大学院修了後、ハーバード大学研究員に。2002年、大阪大学第一内科講師を経て、同年、佐賀大学循環器内科教授。16年から佐賀大学内科主任教授。日本循環器学会常務理事・九州支部長、日本高血圧学会理事、日本血管不全学会理事長。

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