「人類、月に立つ」。なんと壮大な響きだろう。1969年7月20日、小学5年の時だった。月を見上げながら、「あそこにアームストロング船長とオルドリン飛行士がいるのか」と子ども心に感慨にふけったものだ。翌年の大阪万博でアポロが持ち帰った月の石を見た。菱形の石だった◆衣料品通販サイトの運営会社の社長が「月旅行」を計画しているニュースを見て、月に立った人類の偉業を思った。月旅行は月面に着陸するような話ではなく、月の周囲を回るらしい。それでも「月を間近で見たり、丸い地球を見たり」の感動をアピールしていた。いったい費用はいくらかかるのだろうか◆月といえば、松尾芭蕉の〈月はやし梢(こずえ)は雨を持ちながら〉という俳句がある。芭蕉の中でも好きな句のひとつだ。雨はやんだが、雲の流れが早いので月が走っているように見える。梢は雨の雫(しずく)をとどまらせているけれど―といった意味だろうか◆きょうは中秋の名月(十五夜)。ようやく朝晩過ごしやすくなった。♪浴衣の君はススキのかんざし―。歌手吉田拓郎の「旅の宿」は恋人同士が宿で月を見る情景を歌った。大人に背伸びしたような歌だった◆民間初の月旅行といっても手が届かない世界。「旅の宿」にあるように、酒でも飲みながら、雲の流れや月明かりを楽しむぐらいがちょうどいい。(丸)

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