文部科学省幹部らの贈収賄事件を巡り、林芳正文科相は戸谷一夫事務次官の懲戒処分と辞任を発表した。組織的な天下り問題で昨年、前任の次官だった前川喜平氏も引責辞任しており、教育行政を担う事務方のトップが2代続けて不祥事により職を辞するという異常事態となった。戸谷氏とともに初等中等教育局長も処分され、辞任した。

 戸谷氏らは、受託収賄で東京地検特捜部に逮捕・起訴された前国際統括官に飲食接待を繰り返したり、タクシーチケットを提供したりしていたとされる贈賄側の元コンサルタント会社役員が設けた会食の場に同席したという。このため戸谷氏の次官執務室が特捜部による家宅捜索を受けた。

 戸谷氏らのほか、高等教育局長も同様の接待を理由に処分された。次官はもとより、小中高校や大学の教育施策を統括する局長らは官僚を束ねて文科省の屋台骨を支える立場にあったにもかかわらず、業者との接触に慎重さを欠き、脇が甘すぎたと言うほかない。一連の汚職事件と接待問題で地に落ちた信頼の回復は容易ではないだろう。

 再発防止と組織の立て直しが声高に叫ばれているが、天下り問題も含め、私学助成など文科省が持つ大きな権限を背景に形作られてきた癒着の構図がきちんと解明されたとは言い難い。癒着の根を絶てるか。先行きには不透明感を拭えない。

 東京医科大の前理事長らから私立大支援事業の対象校に選ぶよう頼まれ、見返りに2月の入試で息子を不正合格させてもらったとして前科学技術・学術政策局長が受託収賄容疑で7月に逮捕されたのが、文科省汚職の始まりだった。森友、加計(かけ)学園問題で「行政がゆがめられた」との疑惑が広がり、文科省が対応に追われていたさなか医科大側に便宜を図っていた。

 行政の信頼が揺らいでいる、そのとき、なりふり構わず自らの利益のため不正に手を染めたとされる。医科大側と局長の間を取り持ったのが元コンサルタント会社役員。閣僚経験もある野党の参院議員の政策立案を手伝って「政策顧問」の名刺を配り、有望な官僚に近づいたとされる。

 愛想が良く、相手の懐に入るのがうまかったといわれ、前国際統括官の飲食接待は約20回を数え、タクシーチケットの提供なども含め賄賂の総額は約150万円に上った。前科学技術・学術政策局長については、息子の海外旅行費用を一部負担した疑いも出ている。

 元役員の会社は接近を図ろうとする中央省庁幹部のリストを作成していたとされ、そこには前統括官と前局長のほか、厚生労働省や外務省、金融庁などの幹部の名前も並んでいた。戸谷氏ら処分を受けた3人は元役員と会食し、一部は移動のためのタクシー代も払ってもらっていたという。

 接待は他省庁の幹部にも及んでいた可能性もあるが、これ以上に詳しい実態は分からない。天下り問題では人事課職員やOBが関与した国家公務員法違反62件が確認され、前川氏ら歴代次官3人を停職相当とするなど累計43人が処分された。しかし天下り受け入れの見返りに補助金配分で手心を加えるなど有利な取り計らいがなかったかは明らかにされなかった。

 癒着の根は深い。そこにしっかりとメスを入れ、うみを出し切らない限り、国民の不信はいつまでもくすぶり続ける。(共同通信・堤秀司)

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