県内各地の中山間地域では、農家の高齢化や耕作放棄地の増加など共通の課題を抱えている

楠本雅弘さん(中央奥)のアドバイスを受けながら、集落の将来について考える住民=嬉野市の冬野公民館

 佐賀県は本年度から「それぞれの中山間チャレンジプロジェクト」と銘打った取り組みを始めている。農業の担い手不足や耕作放棄地の増加、有害鳥獣被害などの深刻な課題に直面する中、自分たちの集落をどのように維持、活性化していくか-。解決方法を模索し、将来のビジョンづくりへと動き出す地域も出てきた。

9日夜、嬉野市塩田町の冬野公民館に集落の住民約20人が集まった。「10年先、20年先の冬野をどう元気にしていくかをみんなで考えていきましょう」。元山形大教授で、農山村地域経済研究所の楠本雅弘所長が呼びかけた。

 嬉野市では冬野地区と嬉野町の下吉田地区が、プロジェクト推進のモデルとなる「チャレンジ集落」に指定されている。両地区は、集落営農に詳しい楠本さんを講師に招いて来年2月までに計5回のワークショップを開く予定。最終的に集落ビジョンを策定し、実現のための集落運営と改革構想をまとめる方針だ。

 7月の初回ワークショップ以降、冬野地区は地域の現状を把握するため、集落の人口や農地の利用状況などをまとめた「冬野集落白書」を作成。2回目となった9日の会合では、県や市、JAの職員を交えて地域の問題点を洗い出し、解決策や夢を語り合った。

 「ほ場を大区画にする」「耕作放棄地を老人会などで楽しく管理できれば」「法人化の話を進める」といった意見のほか、伝統行事の復活や地域の足の確保といった農業以外の問題もテーマに上がった。冬野地区は約90戸のうち農家は50戸ほどで、非農家を含めた地域全体でのムードづくりが鍵となる。楠本さんは「年配の世代と跡継ぎ世代が意見交換する場がない。話し合いをできる関係が必要」とも指摘する。

 県のプロジェクトは5年計画。市町や県農林事務所が推進チームをつくり、チャレンジ集落・産地は6市町9地区で選定されている。県は6月に推進会議を立ち上げており、地域活動を後押しする。

 中山間地の振興は簡単に解決策を見いだせない問題だけに、県は各地域から優良事例を生み出し、県全体に波及させたい考えだ。県農政企画課は「みんなで知恵を出し合い、動き出す流れが必要。若者や女性の意見も反映できれば」としている。

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