農地法違反が発覚した新産業集積エリアの計画地=鳥栖市幸津町

 新産業集積エリア(産業団地)整備を巡り、鳥栖市が農地法で定められた転用許可を受けずに農地を買収し、所有権を市の名義に移転登記した農地法違反が発覚した。違反状態になって約2年半。なぜこうした事態を招いたのか。発覚後もなぜ公表しなかったのか。市は、市民に丁寧に説明しなければならない。

 産業団地はJR鹿児島線肥前旭駅の東側に約27ヘクタールを整備するもので、2016年2月から売買の仮契約をし、許可を受けないまま登記した。

 市や県によると、契約を始めて間もない4月、担当の市商工振興課が市農業委員会事務局に、地権者から市名義に登記を済ませてしまった分について問い合わせている。

 照会を受けた県農山漁村課の担当者は、移転登記した農地は一部と受け止め、自己所有の農地を農地以外に転用する際に必要な農地法4条による申請を行い、残りは通常の5条による申請をするように回答した。

 ところが、市担当者はこれを「買ってしまった分は後で一括して4条申請をすればいい」と誤った解釈をし、整備用地の大半を買い、登記してしまった。17年5月に市農業委員会事務局が違反を指摘し、初めて部長以上が知ることになり、橋本康志市長には6月に報告したとされている。

 買収した農地を法務局で移転登記するには転用許可書の添付が必要だが、市町村の場合は当然、法を順守しているものとして、法務省の通達により「添付は必要ない」とされており、すり抜けてしまっている。

 それにしても、日常の業務の中で部や課を超えて、注意点について声を掛け合うような組織風土があれば防ぐことができたように思える。事業推進にあたり、副市長をトップにした推進本部を設け、進ちょく状況の報告や必要事項の協議、検討をしていたとしているが、なぜ、チェックできなかったのか。

 市長まで報告が上がっていながら、なぜ1年3カ月もの間、公表せず、内部で是正策の協議を続けていたのか。定例議会や昨年の9月議会の16年度決算審議の際など、説明する機会はいくらでもあったはずである。

 市民からは「民間が違反したら許されないのに、市役所ならいいのか」などと怒りや不信の声が上がっている。橋本市長は12日の市議会一般質問で「最高責任者として私に責任がある」と謝罪したが、執行部の責任は極めて重い。

 市が市民や関係者の信頼を回復するには、第三者による調査を行い、違反に至った全容を明らかにするほかない。それが、この事業を前に進める近道になると提案したい。(高井誠)

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