旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに不妊手術が繰り返された問題で、佐賀県聴覚障害者協会の調査に対し、会員の男女4人が「同意なく手術を受けさせられた」と答えていることが7日、分かった。県内で強制不妊の当事者が特定されるのは初めて。4人のうち、手術を受けた時期と県が把握している年ごとの強制不妊件数が整合しないケースもみられ、「同意」があったとされる手術でも実際には強制されていた可能性が出てきた。

 協会によると、調査は会員に面談で実施。77歳、80歳、84歳の女性3人と79歳の男性1人の被害が明らかになった。いずれも親族に病院に連れて行かれ、同意のないまま手術を受けた。当時4人とも成人で、全員に手術痕があるという。

 ある女性は結婚後、親に病院に連れて行かれた。手術後に親に問いただしたところ、不妊手術だったことを明かされ「生まれてきた子どもが聞こえなかったらかわいそうだから、産まないほうがいい」と伝えられたという。結婚し、子どもに恵まれた後に手術を強いられた人もいた。

 協会は4人の手術に関する文書資料は確認していないが、4人とも手術を受けた日の様子や場所を記憶していた。当時の医院はすべて閉院しているという。

 旧法下の強制不妊手術は、県内では少なくとも86件あったことが判明しているが、個人を特定する公文書は廃棄されているため、当事者を特定できていない。今回判明した4人のうち、1970年代に手術を受けたと話している人もいるが、県の衛生統計年報などによると、70年代の強制不妊件数は0件となっている。

 県が把握する86件はいずれも優生保護審査会で「適」と判定され手術されたケースで、県こども家庭課は「あくまで推測」とした上で「(審査会を経ずに)強制的な同意や親族の同意によって手術されたとすれば、86件に含まれない可能性はあり得る」と指摘する。

 旧法を巡っては、知的障害を理由に不妊手術を強制されたとして、宮城県の60代女性が国に損害賠償を求め1月に提訴するなど、不妊手術の実態解明や救済を求める動きが出ている。

 協会の中村稔理事長(59)は「4人から了承を得られたので、取材に応じた」と前置きし、「当時の国の法律や考え方は間違っている。障害に関係なく平等にある人権を奪われたことは許せない。本人たちの納得がいくように国には謝罪してほしい」と手話で語った。提訴に関して4人は、具体的な検討はしていない。

 ■旧優生保護法 1948年施行で、ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身。旧法に基づく不妊手術は、本人や配偶者の同意を必要とした3条と、同意なしでも容認した4条、12条に規定。4条と12条は、本人に遺伝性の知的障害や精神疾患などがある場合、手術が必要と判断した医師が都道府県の優生保護審査会へ申請し、「適」と判定されれば本人の同意がなくても手術が認められるとしていた。

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