佐賀県の山口祥義知事が、佐賀空港への自衛隊輸送機オスプレイ配備計画の受け入れを表明した。前知事時代の政府要請から4年1カ月を経て、県民の賛否が割れる配備計画は大きな節目を迎えた。知事は機体の安全性確認に続き、漁業者の国に対する不信感を払拭(ふっしょく)するための補償や漁業振興策で防衛相と合意しての表明となったが、3日前にコノシロ漁への影響は断定できないという調査結果に投網漁業者が反発したばかりで、多くの県民は唐突と受け止めたのではないか。駐屯地予定地の地権者である漁業者の理解が得られていない中での判断は、スケジュールありきの印象も拭えない。

 防衛省は2014年7月、佐賀空港にオスプレイ17機配備と、目達原駐屯地(神埼郡吉野ヶ里町)のヘリコプター50機を移駐する計画を佐賀県に要請した。山口知事は受諾会見で、国の安全保障には基本的に協力する立場であり、佐賀県としても「一定の負担をする必要がある」と主張した。オスプレイの安全性を含め「防衛省の説明に不合理な点がない」とし、反対する漁業者との信頼構築へ向け100億円の漁業振興基金創設などで「一定の形ができた」と判断の理由を説明した。

 合意した事項は、防衛省、佐賀県、県有明海漁協などの関係機関が参加して環境保全と補償を検討する協議会の設置や、自衛隊機の空港着陸料で5億円を20年間支払って計100億円の漁業振興基金(仮称)を創設すること、事故など重大事案に対応する両者のホットライン設置を盛り込んだ。

 驚いたのは100億円の基金である。突然出てきた。漁業者が要望した金額ではなく、県は防衛省と交渉で折り合った額として明確な算定根拠を示さなかった。財源となる県営空港の着陸料は県民の財産であり、本来は空港の維持管理に充てるはずだ。漁業者だけに使う「特定財源」化は、防衛省の管轄外の漁業振興策に使うための「秘策」かもしれないが、これまで表立った議論はなく、妥当性には疑問がある。

 県と防衛省は水面下で交渉を続けてきた。当の漁業者には1年前に県が聞き取りをしたものの、具体的な交渉は漁業者抜きで進められた。防衛省のコノシロ漁の追加調査もこれからで、仮に影響があれば飛行ルートや飛行時間帯の変更で対応するとした防衛相の発言に、知事が早々と理解を示したことに「筋書きがあったのでは」と不信感を募らせる漁業者もいる。

 知事は来週にも自ら漁協幹部らに説明し、自衛隊との共用を禁じた公害防止協定の覚書を見直す協議に入る。地権者の中でも用地売却の可否は分かれている。国防への協力と基金創設を理由に外堀を埋めた格好で判断を求められる漁業者側の重圧は想像に難くない。これが果たして「漁業者に寄り添う」進め方と言えるだろうか。

 急転直下の印象を与えた受け入れ表明は、年末の知事選や政府の来年度予算編成を意識した行動にも映る。当初の要請から取り下げられた米軍訓練移転も、政府は佐賀を含めた全国の自治体に協力を求めるとしており、将来像が明確になったとは言い難い。安全性に対する懸念も残る。県民の安全安心を担保するための問題点は本当に解消されたのか。説明はまだ尽くされていない。(辻村圭介)

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