通学時間帯に駅周辺を見守るシルバー人材センター会員の伏木さん(右)=白石町の肥前白石駅

 蛍光色のベストを着た高齢者2人が、電車通学の高校生たちに声を掛ける。「行ってらっしゃい、気をつけて」。杵島郡白石町のJR長崎線肥前白石駅。2016年3月に無人化された際、JR九州から委託された町シルバー人材センターの会員が、通勤通学者が多い早朝と夕方に2時間程度、駅員の代わりを務める。

 ホームからの落下物や線路の異常点検、トイレ清掃…。改札口にある情報端末を使った時刻表の紹介も大事な仕事だ。「駅員」を代行する伏木兼昭さん(73)は「大きなトラブルはない」としつつ、「事故によるダイヤの乱れの説明に少し戸惑った。何かあれば肥前山口駅にいる駅員に連絡を取るよう言われているが…」と緊急時の対応への不安を口にした。

 こうした無人駅は九州で296駅、佐賀県内は34駅。JR九州は鉄道事業の合理化を進め、新幹線を含む九州567駅(佐賀59駅)の半数以上を無人化した。県内では過去5年で7駅が「無人駅」になった。

 国鉄時代に無人化された唐津線東多久駅(多久市)は、市の委託を受けた商工団体がトイレ、駐車場の清掃を担う。老朽化した駅舎は20年前に取り壊し、市は代替施設として1900万円かけて交流プラザを建設した。管理費には年間約100万円の駐車場収入を充てている。課題は利用客の安全確保。過去に壁などを焼くぼやがあり、落書きも相次いだ。防犯カメラを設置したが「早朝や夜間は人けが少なくて…」と女性から不安の声が漏れる。

 合理化のしわ寄せはダイヤにも及び、3月の改正で県内は特急・普通合わせて18本が減り、沿線の学校で影響が出ている。

 伊万里市の敬徳高校野球部では、一部選手が春から全体練習後の自主トレーニングができなくなった。筑肥線伊万里駅からの最終便が、出発時間を1時間半繰り上げたからだ。德永太監督(31)は「体力強化に大切な秋冬期、筋トレの時間をどうやって捻出すればいいのか」と頭を悩ませる。

 朝の便の到着が遅くなり始業時間の変更を余儀なくされた多久市の多久高校。唐津市厳木町から通う3年生(17)は「ただでさえ本数が少なく放課後に1時間程度、学校で時間をつぶしている。これ以上はさすがに無理」と不満げだ。

 「交通弱者」も経済性重視への危惧を抱く。県視覚障害者団体連合会の森きみ子会長(63)は、無人駅では乗降位置を尋ねる駅員がおらず、減便による混雑で移動しづらくなる点を挙げる。「合理化で切り捨てられるのは、車を運転できない私たちのような交通弱者。高齢になれば誰もが視力や体力、判断能力が弱くなり、運転免許を返納せざるを得なくなるのに」

このエントリーをはてなブックマークに追加