上場後2回目となる株主総会で会場入りする株主ら。3月のダイヤ改正について容認する意見が多かった=福岡市のホテル

 6月22日、福岡市内のホテル。約510人が詰め掛けたJR九州の株主総会は活気に沸いた。「いい決算をありがとう」。2016年の上場後2回目で過去最高益となったことに、株主から感謝する声が次々と上がった。

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 国鉄の分割民営化でJR九州が誕生して30年が過ぎた。11年に全線開業した九州新幹線鹿児島ルートの利用と不動産業が押し上げ、18年3月期連結決算で純利益は前年同期比12・6%増の504億円に上った。

 過去最高益を更新する一方で、3月のダイヤ改正では過去最多の在来線減便を断行した。佐賀県内の18本を含む117本。株主総会で大幅減便を憂慮する意見はわずかで、容認が大勢を占めた。「民間企業である以上、赤字路線の見直しは避けて通れない」

 青柳俊彦社長は強調する。「新幹線や福岡都市圏を除くローカル線の赤字が拡大しており、持続可能な鉄道事業にするには単独で黒字化しなければならない」。効率的な経営の徹底が理由にある。だが、民営化したとはいえ、国鉄から引き継いだ線路や車両に加え、国からの経営安定基金には税金が投入されている。「公共交通機関」の位置付けに変わりはなく、地域住民の日常的な足の役割を担っている。沿線自治体が見直しを求める中で踏み切った減便。そのコスト削減効果はどれほどなのか。

 青柳社長は「人件費を含めて数億円はあるが、県庁所在地付近の駅以外は厳しいまま。さらなる効率化はもちろん、公共交通の在り方を地域や自治体と議論したい」と投げ掛けた。

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 今回の改正で佐賀県内の在来線は特急6本(長崎線)、普通12本(長崎、筑肥、唐津線)を削減したほか、車両を減らしたり、最終便を繰り上げたりした。JR九州は「利用が少ない早朝や昼間、最終便を減らした」と乗客への影響を最小限にしたと主張する。これに対し沿線自治体は「通勤・通学列車が混雑している」と反発、元に戻すよう要望したが、JRは改正後の混雑状況を自社で調べ、7月14日のダイヤ改正は運行時刻の調整や車両増結など微修正にとどめた。

 佐賀県は昨年11月中旬から公式、非公式を含めて計5回要請した。県新幹線・地域交通課の担当者は「一貫して訴えてきたのは、地域の実情を聞いてほしいということ。それなのに7月の微修正すら、学校側に話はおろか説明すらしてくれなかった」とこぼす。

 3月のダイヤ改正では長崎線で佐賀-博多の特急の指定席開放を取りやめ、5月末には特急などを割安で利用できる回数券「4枚きっぷ」の販売を終了した。インターネット予約を浸透させることが背景にある。

 不十分な説明への不満が利用者にくすぶる。大阪大学の土井健司教授(交通計画・都市政策)は「地域や利用者を軽視した『株主ファースト』になっていないか。短期的な財務改善にとらわれて地域の生活基盤を損なえば企業価値が下がる」と指摘。「グローバル企業ですら地域貢献を最重要視する時代なのに」と改革を急ぐ姿勢を疑問視する。

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 人口減少が進む中、大幅な減便に踏み切ったJR九州。公共交通の利便性が低下していく事態を、住民、沿線自治体はどう受け止めているのか。「公」と「民」のはざまで揺れ動く鉄道事業の在り方を考える。

 

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