ヘリ事故から半年。嘉納地区の上空には、いまでも自衛隊ヘリは飛んでいない=神埼市千代田町

 陸上自衛隊目達原駐屯地(神埼郡吉野ヶ里町)所属のAH64D戦闘ヘリコプターが神埼市千代田町の民家に墜落した事故から5日で半年。防衛省は5月の中間報告で、主回転翼を固定するボルトが破断していたことを特定したが、原因は不明のまま。墜落現場や周辺上空での自衛隊機の飛行は自粛が続いているが、風に乗ってどこからかプロペラ音が聞こえてくると見上げてしまう住民もいて、事故の影が付きまとう。

 雪が降り、寒風が吹き付けていた季節は移ろい、日差しが照りつけセミの鳴き声が響いていた。2月5日の事故の後、消防や警察、自衛隊の車両で埋め尽くされた道路では、農作業の軽トラックが行き交っていた。「表面的には元の生活に戻ってますよ」。被災した地区の区長を務めていた松永順二さん(68)はこう話す。

 防衛省は5月28日に発表した中間報告で、主回転翼の羽根4枚を回転軸に固定する「メインローターヘッド」内部の金属製ボルトが破断したと説明したが、あれから2カ月が過ぎても原因の特定には至っていない。松永さんは住民の胸の内を推し量る。「原因もはっきりしていないし、心の傷は癒えてはいないと思う」

 事故以降、地区の上空に自衛隊ヘリの姿はなくなった。ただ、駐屯地がある吉野ヶ里町など、近隣を飛行しているヘリのプロペラ音は風に乗って聞こえてくる。30代の女性は「(事故の)前はそんなに気付くことはなかったけど…」と話し、「今は別の場所でヘリが飛んでいても、つい見上げてしまう」。気になって仕方がないという。

 事故機と同型機以外のヘリは、2月下旬から飛行している。吉野ヶ里町企画課は「いっとき(訓練を)休んでたので、再開した時は余計に飛んでいるように感じた」が、飛行回数は事故前に比べてほとんど変わらないという。「騒音の苦情や事故に対する不安の電話はない」と説明し、飛行に伴う振動や騒音を受忍してきた日常に戻ってきている様子をうかがわせる。

 防衛装備庁によると、事故機のボルトの破断については国内の金属の専門機関や、事故機の製造元に当たる米ボーイング社の協力を得て、詳しい調査や分析を進めている。解明や最終報告の時期に関しては「予断をもって答えられない」と見通しを示していない。

 ヘリは2月5日午後4時43分ごろ、定期整備後の試験飛行中に墜落して隊員2人が死亡、現場の住宅が全焼し、この家にいた小学生の女児がけがをした。隣の親族の住宅も焼け、他にも部品落下などによる8件の被害が確認された。

このエントリーをはてなブックマークに追加