国営諫早湾干拓事業を巡る訴訟の控訴審判決で、一審判決取り消しを受け報告する馬奈木昭雄弁護団長(左)と開門派の漁業者=30日午後、福岡高裁前

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡り、潮受け堤防の排水門の開門調査を命じた確定判決に基づく間接強制金(制裁金)を強制しないよう国が求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は30日、国側敗訴の一審佐賀地裁判決を取り消して請求を認めた。確定判決に反して開門を拒み続けた国の姿勢を追認、確定判決は事実上無効となり、「開門」と「非開門」の相反する司法判断の並立状態が解消する見通しになった。漁業者側は最高裁へ上告する方針。

 敗訴した漁業者側は、2010年12月に確定した福岡高裁判決の開門命令の後ろ盾が失われ、開門問題は大きく転換して「非開門」の流れが決定的になった。

 今回の訴訟は、国が確定判決後の「事情の変化」を理由に、制裁金の強制執行を免れるための手続きとなる「請求異議」の訴えを起こしていた。確定判決に対する国の請求異議が認められるケースは極めて異例。高裁は制裁金支払いの停止を命じた。

 控訴審では漁業者側の漁業権が存在するかどうかが争点の一つになった。西井和徒裁判長は判決理由で、漁業法で存続期間を10年と定める共同漁業権が13年8月で期限を過ぎていると指摘、「期間の経過で漁業権は消滅したと認められる。その後の漁業権は新たな権利で法的な同一性を有しない」という判断を示した。

 その上で「確定判決の結審後、漁業権の消滅によって(漁業者の)開門請求権も消滅したことが認められる」と、国の主張を全面的に採用した。漁業者側は「漁業権は期限の前と後でほぼ同じ内容で、漁業の実態としても何ら変化はない」と反論していたが、「結果として同一になったにすぎない」などとして退けた。

 国は干拓地の営農者らの訴えに基づき、2013年11月に長崎地裁が出した開門差し止めの仮処分決定や、開門の事前対策工事が反対運動で着手できない事情なども、開門できない理由として挙げていた。西井裁判長はこれらの可否について判断を示さなかった。

 国が14年6月から約4年にわたって支払ってきた制裁金は12億330万円に上る。国は漁業者側に対して返還請求をする方針を示している。訴訟の和解協議で国が提案した100億円の漁業振興基金の創設案は、協議決裂によって実現しなかった。

 

 ■国営諫早湾干拓事業問題

 諫早湾干拓は有明海の諫早湾で、農地確保と低地の高潮対策を目的とした農林水産省の事業で、潮受け堤防で湾奥部を閉め切って農地約670ヘクタールや調整池約2600ヘクタールなどを整備し、2008年に営農が始まった。有明海の漁業不振を受けて漁業者が開門を求めて提訴し、開門を命じた10年12月の福岡高裁判決を国が上告せず、確定した。開門に反対する干拓地の営農者らが対抗して提訴し、長崎地裁は13年11月の仮処分決定と17年4月の判決で開門の差し止めを認めた。

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