裁判員裁判の公判で40人を超える証人に対し、質問を重ねた検察側(右)と弁護側(絵・円田浩二)

計画性 事前の穴掘りも日常的/動機 借金返済脅しと受けず

 佐賀市久保泉町川久保の残土置き場で男女2人を生き埋めにして殺害したとして、殺人罪などに問われた無職於保照義被告(69)=神埼市神埼町=の裁判員裁判は、計15回の公判を経て結審、8月6日の判決に向け評議に入った。裁判の後半は犯行の計画性や動機を巡り被告の会社の元従業員らが法廷に立ったが、検察、弁護双方とも主張を裏付ける証言が出てきたものの“決定打”はなく、判決の行方が注目される。

 主な争点は、犯罪が絡んだ事案なのか偶発的な事故なのかという事件性の有無と、被告が犯人なのかという犯人性。法廷で証言した証人は40人を超えた。

 計画性を巡る主な証人としては、犯行があったとされる2014年8月15日当時に残土置き場を管理する被告の会社で働いていた元従業員らが出廷した。被告の指示で数日前に油圧ショベル先端のバケットを爪があるタイプに交換し、現場となった穴を掘った経緯が語られた。

 穴を掘った元従業員は、被告から「あいどん(解体業者)が(産業廃棄物を)持ってくるけん」と理由を告げられたと証言。盆休み明けには穴は被告によって整地され、「(被告が)『結局何も持って来んかった』と話した」と明かした。

 また、整地された穴の上には後日、被告の指示で残土が運び込まれたが、「造成工事現場の埋め戻しに使う」とする被告の説明に反し、遺体発見まで1年近く積まれたままだったとの証言もあった。検察側は遺体を発見しにくくする隠ぺい工作との見方を示す。

 一方、弁護側は、残土置き場では産業廃棄物の不法投棄が繰り返されており、以前から穴を掘ることがあったと強調。従業員からは「(穴を掘るのを)十数回から20回は見た」との証言があったほか、盆前の被告の携帯電話の通話履歴に解体業者の番号があったことを従業員に確認させる一幕もあり、穴掘りの指示が犯行の準備ではなかった可能性をにじませた。

 動機を巡って検察側は、被告が男性から4千万円の返済を求められ、不法投棄を告発するとも言われていたと主張。男性の知人は「(男性が)被告に『市役所に届けたらお前も困るだろう』と脅したような感じだった」と証言した。

 弁護側は、被告は借金返済や告発では追い詰められていなかったと主張。男性の知人は弁護側の質問に対し、被告が男性におびえた様子はなく、男性と被告が笑っている様子もあったと述べた。

 検察側は論告で、現場が被告が管理する場所であること、犯行時間には現場近くにいた、動機もある、など複数の要素が重なり合うとして「一つ一つの事実を、絵画の全体を眺めるような感覚で総合的に判断してほしい」と主張。弁護側は最終弁論で、医師の証言などから男女が穴に入れられる前に死亡していた可能性があると強調、「殺害する目的で穴を掘ったとは到底言えない」として計画性にも疑問を呈し、殺人罪について無罪を訴えた。

メモ

 2015年7月に残土置き場の土中から在日韓国人で山口県下関市の会社経営羅時燦(ラジサン)さん=当時(76)=と知人で同市の松代智恵さん=当時(48)=の遺体が発見され、佐賀地検が15年10月、於保照義被告を殺人罪で起訴した。検察側は、於保被告が14年8月15日、2人が乗った車を油圧ショベルを使って深さ約5メートルの穴に落とし、上から土砂を掛けるなどして窒息死させたと主張している。

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