江戸時代にうつ病は知られていたのだろうか? 江戸庶民は1日、平均で3万歩を歩いていたそうです。1歩平均50センチとして、1日に15キロを歩いていたことになります。明治期の会社員も同じように3万歩。これに比べると、現代人は1日、5000歩から7500歩。病気予防を考えると、目安として、1日平均2000歩=寝たきりの予防、同5000歩=要介護、認知症、心疾患、脳卒中の予防、同8000歩=動脈硬化、骨粗しょう症、高血圧症、糖尿病の予防につながるといわれています。1980年代後半からウォーキングが推奨されるようになった1つの理由は、ラットの実験で、運動しないと脳内のセロトニン分泌が促進されないという報告からで、運動不足や不規則な生活パターンがうつ病にかかりやすくなると報告されました。うつ病の患者さんに歩いてもらうことで、体力の向上とともに、ストレスの解消および十分な睡眠がとれるようになり、症状の改善が見込めます。

 その一方で、食事は、江戸庶民は1日ご飯を平均5合も食べていました。現代人は、2合前後でしょうか? 実は、脳を活性化する物質は、モノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン)で、この原料はすべてアミノ酸です。つまり、タンパク質をある程度摂取しないと元気になりません。植物性タンパク質(大豆性食品など)、動物性たんぱく質(魚や肉など)です。例えば、セロトニンの合成には、トリプトファン(アミノ酸)に補酵素(ビタミンB6)が必要です。私は、うつ状態の学生さんに、バナナにビタミンB6が多く含まれることから、朝食として、豆乳(タンパク質)バナナ(ビタミンB6)療法を推奨しています。

 抗うつ薬療法に否定的ではありませんが、薬だけではなく、運動と食事療法、太陽の光をしっかり浴びることが改善につながることを強調したいと思います。(佐賀大学院教授・精神保健指定医・産業医 佐藤武)

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