長崎県の国営諫早湾干拓事業の閉め切り工事で関係者が見守る中、潮の流れをせき止めるため次々と落とされる鋼板=1997年4月14日

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門の開門問題を巡る訴訟の判決が30日、福岡高裁(西井和徒裁判長)で言い渡される。開門しないために支払い続けている間接強制金(制裁金)を強制しないよう求めた国が勝訴する公算が大きくなっている。確定判決に基づく開門義務を国が果たさないまま、事実上無効化する異例の事態が現実味を増している。

 制裁金は、開門を命じた2010年12月の福岡高裁確定判決で勝訴した漁業者45人に対して現在、1日90万円が支払われている。国は14年1月、強制執行となる制裁金の支払いを免れるために佐賀地裁に請求異議の訴えを起こした。

 長崎県側の営農者らは開門に反発し、13年11月には長崎地裁で開門の差し止めを認める仮処分決定が出て、国は相反する司法判断に板挟みになっていた。しかし、請求異議訴訟の14年12月の佐賀地裁判決は、仮処分などを開門できない理由として認めず、請求を棄却した。国側は控訴した。

 国は訴訟で開門の可否を明確にしてこなかったが、17年4月に農相が開門しない方針を表明した。福岡高裁は今年2月の結審後に始まった和解協議で、開門しないことを前提に国が提案する漁業振興基金の創設によって問題解決を図るよう勧告し、「非開門」の姿勢を明確にした。漁業者側弁護団によると、高裁は漁業者側に不利な判決になることも示唆したという。和解協議は5月に決裂した。

 国が14年6月から約4年にわたって支払ってきた制裁金は12億330万円に上る。福岡高裁が判決に伴って強制執行の停止を決定すれば、支払いが止まる。国は勝訴した場合、制裁金の返還を求める方針を示している。

 国が勝訴する判決が出ても、開門を命じた確定判決は残る。漁業者側弁護団は敗訴すれば上告する意向で、訴訟は継続する見込み。馬奈木昭雄弁護団長は「確定判決を国が守らなくていいとする理由や、開門を求めるわれわれを不当とする見解を裁判所はどう示すつもりか。誰も納得しないはずだ」と話す。

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