知的障害者が入所する「めぐみ園」で開かれた夏祭り。多くの家族連れでにぎわった=佐賀市東与賀町

防犯カメラ映像を映すモニターを操作する高田施設長。プライバシー保護のため、日常的には監視しない=佐賀市のはがくれ学園

 2年前、相模原市の知的障害者施設で起きた殺傷事件は、佐賀県内の関係者にも暗い影を落とした。事件後、国や県の補助制度に新たに防犯設備整備が加わり、それを利用した県内の障害福祉施設は、2年間で68件に上る。施設側には、地道に進めてきた地域共生や、利用者の人権保護の取り組みを後退させたくないとの思いがある。「生産性」で人の価値をはかる優生思想への共感を警戒しつつ、共生の歩みを続ける。

 佐賀市久保泉町の知的障害者支援施設「はがくれ学園」は防犯カメラ28台、センサーライト6台、モニター、レコーダーを導入、今月から稼働している。カメラは屋外や施設内の廊下などに設置。映像は1カ月分を保存する。

 利用者の生命、財産、人権。施設はこの3つを守ることを最優先事項に位置付けるが、高田哲男施設長(60)は「防犯を突き詰めれば、刑務所のようになってしまう。地域から閉ざしたくないし、利用者を閉じ込めたくない」と思いは複雑だ。プライバシー保護のため、カメラ映像は日常的にはチェックしない。

■「優生思想」警戒

 相模原事件の被告の元職員は「障害者はいなくなればいい」と主張した。このような「優生思想」を巡っては今月、自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国ブロック)が性的少数者(LGBT)カップルについて「子どもをつくらない」「『生産性』がない」と月刊誌に寄稿、ネット上で「優生思想と同じ」などと批判をされている。

 高田施設長は、1982年の開所以来、地域で受け入れられてきたと感じる一方、地域の外では今も差別を経験する。利用者と温泉や外食店へ行くと、一般客から「なんで、こがんかとば連れてくるとか」と心ない言葉を浴びせられることがある。

 「利益になるか、役に立つか。生産性が人の価値の基準であるかのような主張は、障害者だけでなく性的少数者などマイノリティーや弱者を差別、否定する考え方につながる」と高田施設長。共生社会へ道半ばだからこそ、開かれた施設であり続けたいと考える。

■続ける夏祭り

 24日夕、佐賀市東与賀町の障害者支援施設「めぐみ園」。利用者がソーラン節を踊り、地元の児童や婦人グループなどがダンスや太鼓演奏を披露した。焼きそばを提供する地元商工会のテントには行列ができた。

 祭りには毎年700人超が訪れる。04年の開所当時、東与賀町長だった石丸義弘さん(74)は「最初は施設の夏祭りだったが、今ではすっかり地域の夏祭りになった」。にぎわう会場を見渡してうなずいた。

 施設は事件直後、出入り口を閉鎖するかどうか議論した。「施設側から地域を遮断すべきではない」。全員で方針を確認した。森永弘太施設長(65)は言う。「門戸を閉ざさないことが、あの事件に対する私たちの答えです」

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