九州新幹線長崎ルートは迷走を続けている。車輪の幅を変えることで在来線と新幹線を直通運転できるフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の開発が難航し、結局、導入断念に追い込まれた。その代替策を検討してきた与党の検討委員会は、在来線を利用する予定だった新鳥栖-武雄温泉間の整備方式を新線のフル規格にするか、在来線のレール幅を広げるミニ新幹線にするかの二者択一とする「中間取りまとめ」までしたものの、7月中に出すとした結論は期限を切らずに先送りした。課題の道筋をつけないまま「見切り発車」したツケが回ってきた。

 与党検討委員会が結論を先送りしたのは、フル規格にせよミニ新幹線にせよ、新たな整備方式では巨額の追加負担が生じる佐賀県の理解が得られていないことがある。JR九州や長崎県が全線フル規格化への要望を加速させている中で、拙速に結論を出さなかったこと自体は佐賀県への一定の配慮がうかがえる。

 ただ、これまで合意してきた前提となるフリーゲージの導入断念に至ったことは、明らかな約束違反である。これでは2022年度に武雄温泉-長崎は暫定開業するが、全線開業時期は大幅に遅れて見通しは立たない。武雄温泉で在来線と新幹線を乗り継ぐリレー方式(対面乗り換え)の長期化も避けられなくなった。長崎ルート整備の根本を揺るがす事態を招いた責任は重く、提案・推進してきた国は導入断念の与党方針を受け入れるなら、まずもって関係者に謝罪すべきではないか。

 一方的に二者択一を迫られる格好になった佐賀県が反発するのも当然だ。並行在来線をJRが20年継続することで沿線自治体の同意を不要とした07年の「3者合意」、リレー方式による暫定開業を容認した15年の「6者合意」と、直面する課題をなんとか繕って計画を前に進めてきたが、いよいよ立ちゆかなくなった。

 時間短縮効果があまりなく、費用負担だけが大きい佐賀県にとって、沿線以外の県民の理解を得るためにも山陽新幹線乗り入れによる「関西直通」が必須条件であった。費用対効果が小さくても新幹線整備を進めるよりどころとしていた。だからといってフリーゲージが駄目なので、同じ関西直通を可能にする方法として全線フル規格やミニ新幹線を、安易に受け入れることにはならない。

 JR九州と長崎県、新線の沿線となる武雄市や嬉野市が望む全線フルの場合、さらに6千億円の事業費が必要となり、佐賀県の試算では実質的な追加負担額が1100億円に上る。国などはJRからの貸付料収入を反映させれば負担額は低くなるとみる。それでも巨額には変わりなく、与党検討委は佐賀の負担軽減策をJR九州や長崎県に検討するよう求めているが、簡単には見いだせそうにない。

 与党検討委の山本幸三委員長は国の責任に触れた。佐賀県に非がない以上、どうしても二者択一を求めるなら、追加負担の軽減策は、高速鉄道ネットワークをつなぐ観点から、国も主体的に打開策を示す責任がある。

 佐賀県民の多くは現在の特急でもあまり不便を感じていない。新幹線による料金の値上がりなどへの懸念は根強い。県民が納得できる方策があるのか。佐賀県の判断はそれからだ。(辻村圭介)

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