樹木医による診断作業の状況

 先日の台風7号は、佐賀県内でもさまざまな文化財に被害をもたらしたようだ。有田町内では、毎度のことながら心配させられるのが、国指定天然記念物「有田の大イチョウ」である。今回も、大量の枝葉が落下したが、幸いにも大きな被害には至らなかった。

 この大イチョウは、日本最大クラスの大きさで、高さは30.5m、樹齢は千年ほどと言われる。記録では、枝の落下はすでに大正時代には問題となっており、それから1世紀近くも解決できていない。

 この難題を解決すべく、先日、はじめて成育状況の診断作業を実施した。NPO法人「自然への奉仕者・樹木医協力会」に委託して、音波で樹木内の腐食・空洞を調べる精密診断や周囲の土壌診断、実際に樹木医が樹上に登って外観診断などを行った。正式な診断結果はまだだが、健康状態はおおむね年相応ということらしい。この結果を受け、次に枝と枝をロープでつないで大枝の落下を防ぐ、ケーブリングの作業を実施予定である。

 ところで、この大樹には一つの伝説がある。雌樹から雄樹に変わったというものだ。樹木の所在する弁財天社の神託によると、世人は往々に実を得るために雌樹ばかりを植樹するため、神木のイチョウが急成長し、雄樹に変わって近隣の雌樹に結実させて、全町民に寿福を与えた。そして、その寿命は無限であると告げられたという。

 神託の真偽は知らないが、少しでも成育状況を良好なものとするため、今後も各種の対策を講じていく予定である。

 (有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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