北朝鮮の「非核化」、核軍縮、中東情勢の安定化。こうした多くの課題をトランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領は本来、協力して前に進めるべきなのだが、米ロ首脳会談は目立った成果を上げずに終わった。

 国際会議出席を利用したものでなく、独立した首脳会談としては初めてとあって注目された。しかし、結果を見れば、両国が世界の諸問題に協力して取り組む態勢には当面ならないと分かる。

 トランプ氏は価値観が異なるロシアとの「大国協調」を一足飛びに目指すよりも、欧州や日本など、長年培われた同盟国との協調を発展させ、国際課題の解決を図るという王道をまずは取るべきだ。

 首脳会談では2021年に期限を迎える米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)や、米ロが互いに「違反」を指摘し合う中距離核戦力(INF)廃棄条約の順守問題など、核軍縮での連携の必要性が表明された。北朝鮮の非核化に向けた協力も確認した。

 しかし、これらは首脳会談への期待値の最低線であって、成果とは言えない。今年に入って米国が核使用のハードルを下げるとみられる核戦略を発表、一方、ロシアは「無敵」の核兵器の開発を表明するなど、冷戦時代に逆戻りしたかのような軍拡が懸念されている。会談ではこの流れを逆転させる踏み込んだ軍縮合意が求められていた。

 また、北朝鮮の「非核化」協力も、当然の合意で目新しさはない。

 成果が乏しい理由は、ロシアによる米大統領選介入疑惑が決着していないためだ。14年のクリミア併合で生まれたロシアへの反発も底流にあり、米国では対ロシア警戒感が強まっている。

 しかし、トランプ氏は米情報機関がロシアの選挙介入を認定し、ロシアの当時の情報機関当局者ら12人が起訴されたにもかかわらず、「プーチン氏は疑惑を否定した」と記者会見で説明しただけでロシアを追及せず、米情報機関よりロシアの肩を持つような姿勢だった。これに対して「弱さの表れ」「悲劇的過ちだった」との指摘も議会有力者から出ている。

 シンガポールでの米朝首脳会談もそうだが、トランプ外交はトップ間の取引を急ぐあまりに、相手国の問題行動を軽視する傾向が強い。オバマ時代の業績を否定したい衝動も感じられる。これでは、国内、国際世論の支持を得られず、トップ間の合意を実現に移す実務レベルの交渉が実を結ぶことにならない。

 米ロ首脳会談前にトランプ氏は貿易問題を材料に「欧州連合(EU)は敵だ」と語るなど、欧州との対立をあおるような言動を繰り返した。先進7カ国(G7)の枠組みへの嫌悪感も示している。

 プーチン氏からすれば、米国と欧州の同盟弱体化は願ってもない事態だ。クリミア併合以来続く孤立状態の解消や経済制裁解除に向け、米欧の分断を進めやすくなる。

 トランプ氏が言う「米国とロシアが仲良くすることは世界の平和にとって良い」のは確かだ。しかし気付くべきは、表面的な得点稼ぎのためにトップ外交に打って出ても、真の業績にはなり得ない、という点だ。練り上げた戦略と準備がなければ、足をすくわれる。ズタズタになった同盟関係を立て直して初めて、プーチン氏は真剣にトランプ氏と向き合うだろう。

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