Q合意した内容は
リレー方式で暫定開業
九州新幹線長崎ルートに導入する予定だったフリーゲージトレイン(軌間可変車、FGT)の開発遅れを受け、2016年3月に関係6者が協議した。参加したのは与党検討委員会と佐賀、長崎の両県、JR九州、国土交通省、鉄道・運輸機構。このときの合意に基づいて現在も整備が進められている。
合意では、在来線特急と新幹線を乗り継ぐリレー方式で22年度に暫定開業し、武雄温泉駅で対面乗り換えをすると決めた。これに必要な工事費用は、両県が実質負担額約12億8千万円(佐賀3億2千万円、長崎9億6千万円)をいったん支払い、両県がJR九州から購入予定だった肥前山口-諫早間の線路や駅舎などを、暫定開業時に無償譲渡してもらうことで相殺する。
肥前山口-諫早間は暫定開業時、運行をJR、鉄道施設の維持管理を両県で担う上下分離方式に移行するが、JRが20年間運行を維持するとしていた期間を23年に延長した。上下51本から10本に減便される予定だった博多-肥前鹿島間の在来線特急は、暫定開業後3年間は上下14本程度に上積みし、普通列車は現行水準を維持するとした。
肥前山口-武雄温泉間の複線化工事は暫定開業までに大町-高橋間を実施、その後は段階的に整備する。
Q佐賀県の立場は?
知事「合意が整備の前提」
6者合意では、FGTの軌間変換を行う武雄温泉、新鳥栖両駅のアプローチ線の整備について、先行車や量産車の導入時に使用可能になるように整備すると定めた。FGTが開発されるまで先送りした形だ。
合意後も開発遅れは長引き、FGTの長崎ルートへの導入は順調に進んでも27年度半ばになる。今年4月の与党検討委員会のヒアリングでJR九州は、合意にある対面乗り換えについて「量産車導入までの一時的なもの」という解釈を示した。長崎県も「暫定的な姿」という考えで、双方ともリレー方式の長期化や固定化を否定している。
長崎ルートは、佐賀県内でも地域によって便益が大きく異なる。不要論も根強い中、6者合意は、佐賀県として全国に高速鉄道網を整備する意義を最大限に考慮し、長年続いた県内を二分する議論も踏まえて、折り合いをつけた結果といえる。山口祥義知事は「合意が整備の前提」という立場を繰り返し主張し、県議会でも支持する意見が大勢を占めている。