日本人、特に女性と子どもの睡眠時間は世界一短いといわれています。3カ月から4カ月の乳児の母親は6.7時間(廣瀬ほか調査、2016)、3歳以下の子どもは11.6時間(17カ国睡眠調査、2010)と、いずれも最も長い国に比べると1.5時間程度短くなっています。

 母親は産後すぐから2~4時間毎に授乳をするため,まとめて眠ることができないだけでなく,寝つきが悪かったり,途中で目が覚めたりするなど睡眠効率も悪くなります。赤ちゃんに夜泣きや寝ぐずりがあるとさらに大変です。夫の仕事に影響しないように、近所迷惑にならないように、虐待を疑われないようにと、赤ちゃんを抱っこしてあやし続けています。ようやく寝ついたと思ってベッドに下ろそうとすると赤ちゃんが泣きだし、一晩中抱っこしている母親もまれではありません。

 慢性の睡眠不足はうつや自殺の原因となることが知られています。産後10人に1人がうつになってしまうのもうなずけます。赤ちゃんも睡眠不足になるとむずがったり,扱いにくくなります。どこかで育児中の寝不足は当たり前だと諦めていないでしょうか。

 なぜ日本の母子は睡眠時間が短いのでしょう。その理由に親の寝かしつけ方が影響しています。赤ちゃんは大人とちがって眠りが浅く、寝ていても動いたり、顔をしかめたり、声を出すことがあります。これを眠れないのだと勘違いして抱き上げたり、授乳すると起きてしまいます。毎日続けていると抱っこや授乳といった儀式がないと眠れない子どもになってしまいます。

 赤ちゃんは眠る練習をしています。夜は静かな環境をつくり、授乳やオムツ交換もできるだけ暗いなかで行います。ぐずり始めたら5~15分間、注意深く見守りましょう。最初は忍耐が必要です。優しい子守唄を聞かせてあげてください。赤ちゃんが安心して眠れるように、生まれてすぐから正しい寝かしつけを実行しましょう。そして、「世界一睡眠時間が短い」という汚名を返上し、母と子の良い眠りをめざしましょう。

 (佐賀大学教育研究院医学域医学系=母性看護・助産学領域=教授 佐藤珠美)

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